しかし見事な作品です。70年前ですよ。実はこの人のシナリオ集も持っているんです。久しぶりに読んでみましょうかね。もう一度、近いうちに幻の場面ありのバージョンを見てみたいと思います。「人情紙風船」が入っていないのが残念です。
「他人の顔」勅使河原宏監督 1966年
この監督の作品久しぶりです。そして実にいい映画だとまた再認識いたしました。でも今この宗家、映画作るとしたらまったく違うタイプの映画になりそうな感じもします。
しかし、若さあふれる映画です。そして京マチ子さんが老けてしまったという悲しい現実にこのころから直面します。しかしはっきり言ってこの映画はオールスターキャスト。さらに美術良し、原作良し、音楽良しと悪いところがありません。本当に素晴らしい日本を代表する映画の一本でしょう。
まあ顔の形の疑問。これって根源的な問題です。皮膚と配列という表層的なものでしょうが、持っている問題は根源的。
美意識とはなにか?を問われます。その前に常識とはなにか?
「覆面の心理」人間は匿名では違う人格が出てくるのか?答えは戦争でもわかります。それに呼応するごとく精神病院が出てきます。なかに戦争の被害者がたくさんいるのです。そして美しい顔に傷のある女の子も。
このほかにも素晴らしいシーンの連続で、いちいち切り取ることはしませんが、仮面の人格とそれまでの人格と怪我をしたあとの人格の3つが並存していたのです。というより怪我をしたから仮面の人格を楽しめるようになったのでしょう。
精神薄弱の女がその本質を見抜いたのは、顔などの外見にかかわらず、人を識別しているからです。
ということは一般の人は何を持って人を識別しているのか?という問いかけが残ります。
とにかく実存の問題、さらには人間の内面の問いかけを提示しております。私はそのスタッフの豪華さに唖然としてみました。いい人材が使われてます。それも才能でしょう。あとは多くは語りたくないとても良い映画です。
「ダンス・ウィズ・ア・ストレンジャー」マイク・ニューウェル監督 1984年
WOULD YOU DANCE WITH A STRANGER.
この映画は実はロードショーのとき観たかったんですが見れなかった思い出があります。
1954年のロンドン。いい景色が出てきますよ。
ナイトクラブの歌手に恋した青年。しかしこの女には子供がいてその子供を学校に入れるのを経済的に援助してくれる男がいます。
青年のほうはルマンレースに遠征に行きますが結果は優勝できず。こちらも婚約者はいるのです。ですから盛り上がるとしても、犠牲になる人はお互いにいるというわけ。
青年は良家のお坊ちゃんで、実際に実家を見に行ったときに女はあきらめました。何せ子持ちの水商売の女ですから。しかしお互いの感情は深く交流しているのです。ですが女は子供を学校にやることにします。平凡な中年を選ぶのです。ここで面白いのは男は二人ともトラッドを着てますが青年のほうが粋な服装です。この辺は日本でも昔流行した形で懐かしい感じもしますよ。
そしてお互いが勝手な部分があるので周りに迷惑をかけてもう一緒にはなれない関係になってしまいます。しかし想いはお互いに持ったままなので話がややこしい。しかし引き合う気持ちは止められないのです。でもってお互いに責任を持ち合う関係にはなれなくて子供も中途半端になってしまいます。それで女に好意を持っている中年の男は心配で二人がけんかをすると仲裁をするのですが気持ちが自分に向かない苛立ちがあるのです。でもこの愛する感情だけはどうしようもないものなので自分のほう向くのを待っているのですがなかなか自分のほうに向かないのです。それをいらいらしながらもじっと耐えているのです。まあ日本だったらこのような男のほうが勝つのでしょう。しかしこの映画ではどうなんでしょう。まあ予想を超えた最後でした。
とにかく感情のもつれ合いの映画だけではなく景色、女の化粧などがすごく印象に残る映画です。
「チャオ、マンハッタン」ジョン・パーマー、デビット・ワイズマン両監督 1972年
ずばり来ますよ、心の中に、この映画は。
久しぶりに観ます。「17歳のカルテ」とかを超えて、「GIA」などとともに重いテーマです。
一人のトップモデルの転落の様子が間接的に描かれてます。どういう風に?それは一時消息を絶って精神的にどん底のこのモデルを映画に出演させることで転落前の映像とともに転落後の映像を重ねて観る者に何が起こったのか間接的に想像させるというものです。
実際監督たちもその数年間のモデルの行動は知らないらしい。
その数年の間に豊胸手術もして胸は大きくなって、その胸を隠すこともなく常に顕にしてほとんど隠すということをしません。さらにメイクもあまりしないので美人の素顔に近い顔に接することが出来ます。このあたりになると、いかに精神的なものが外見的なものよりも強いのかということが逆にわかるという、強い逆説的な説得力があります。
さらに美人の素顔という覗き見的な視点、まだ現役人気モデルだったときの周りの環境の異常性などもこの映画にアクセントをつけております。ここでも出てくるのですが、ウォーホルという人物は私は嫌いなのですが、何でこうも周りを不幸にするのだろうか?と思わざるを得ない部分を再認識しますね。