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「流されて」リナ・ウェルトミューラー監督 1978年 イタリア

「ムーンリットナイト」の監督ですね。この作品が代表作でしょう。どうでもいいですが主役になる女が女優として魅力ないですね。これでは映画自体の魅力がなくなります。

イタリアの北部と南部の所得格差と資本主義と共産主義という安易な二元論をまずは地中海バカンスのヨットの上で再現します。

しかし主人公の男Aと女BとしてAのいう「女を甘やかすから」勝手にされるというのはあってます。本当に気ままに我侭三昧です。この中の悪い二人がヨットからボートで洞窟を見に出かけますかね。なにかBの方にAを意識する動機があるんです。またボートのエンジンが故障してしまう。普通はオール(予備用として)あるでしょう。でも使えないというのです。風が強いし、ゴムボートなので意味ないのでしょう。そんな中2日くらい漂流して岩の島にたどり着きます。ここまでふたりの言い争いというかBの愚痴ばかり聞いてます。映画とするとさすがに下手な作りでないか。そしてこの映画で一番おかしいのは、女のほうがこの環境でこのような仕打ちをされたなら自活するでしょう。それだけのインフラというか自然はありそうなんですが、火の作り方も知らないのかもしれません。学校の自然教室は重要なんですね。こういうときに役に立ちます。

しかし、男女の仲が自然と近づいていくのではなく、強引にBを力でねじ伏せます。対等なら結びついてもいいのでしょうが、身分というか財産が違うのです。まあ、ここでもお金の論理がついてきますね。まだ権力の論理(中世貴族の統治の意味)よりはましですがどうもしっくり来ない展開です。それにふたりだけなら真っ裸になればいいのにズボンはいているのはこの時代の倫理観なんでしょうか。まあかわいいです。なぜかわいいのか、梶上等兵を見ているからでしょう。あのときは野蛮さはもっと強く、ヒューマニズムはもっと深い描かれておりました。

Bは意外とうぶで、Aと良い仲になって行きますが、描写が甘い。抱き合うときはお互いに裸です。しかし映画では服着たまま。さらに共産主義とブルジョワ階級の比較ですがそんなのどうでも良い。すべてが中途半端になるのです。Bは財産とブルジョワ階級というベールをきたうぶな女だったというのですが、ちょっとだめですね。Bがヨットを見かけたとき助けを求めないでAのことを好き、と言ってからは内容的にはよくわかりますが、結論がわかります。Bがブルジョワの階級にいて教育を受けているからこんな愛になっただけで、Aが同級生と来ていたらこんな風にならないのです。頭で考えないですぐに一緒になったでしょう。逆にBが友人とこの状況になったなら同じく意外とあっさりした感じになったんじゃないかと思います。結局万人が同じような欲求を持っていてそれをどう隠しているか抑圧しているかということの違いを言いたいのでしょう。それと気がついた点、監督が女なので女に合うような感じで撮ってます。男優は魅力的なのもその一因かも。最後の電話でこれは発揮されます。現実的かロマン的か?私が作るなら前のほうでしょう。Aも馬鹿なんだ、また島に行くなら戻ってこなければいいのに。焼けぼっくりに火がつくかどうか、の電話です。幸い子供がいるのが男の方なのは話をロマン的にしやすい。しかし「椿姫」同様に身を引きます。お互いの今ある家族を大事にしたいということでしょう。Aがロマンティクになっただけでした。男をロマンティストにしやがって、と思いますがね。この監督はこの映画で最後でしょう。出ている俳優が「ムーンリットナイト」もいいのですが生かしきれてませんもんね。

 

「謎の戦艦陸奥」 小森白監督 1960年

邦画を続けることは避けようと思うんですが続いてしまいました。

昭和18年6月8日瀬戸内海、柱島沖で謎の大爆発をした、ということは事実とのことです。この映画も魂の鎮魂を含んでいるとのこと。そういえば松本監督のほかの作品も見ないといけないですね。「十六歳の戦争」はよかったけど「薔薇の葬列」がいまいちでしたので先に進めません。多分私が幼いのだとは思います。それはこの映画でも痛烈に感じます。というのは、兵隊の言葉がわからない。これ一回見ただけではたぶん理解できないでしょう。まともな軍事用語をしゃべられるとわかりません。ミッドウェイでの戦略の変更を山本長官が言って来たということ。この連合艦隊司令長官も4月11日ガダルカナルの近くで戦死。なんとうちの開店記念日ですね。

このミッドウェイで空母を失っても陸奥は引き返せと指示を受けていたのです。何ででしょう?陸奥が日本海軍の象徴的存在だからです。この陸奥と大和は結局は時代遅れになってしまったのですが。それはアメリカ軍が空母を撃沈させたことでもわかります。

その陸奥を沈没させて戦意喪失を狙うスパイたちがいます。とりあえずこのスパイは東洋系です。乗組員の国に対する憤りを利用して爆破させようとするのですが、それ以前に、国への忠誠のほうが上で失敗します。次なる手は、今アメリカで警戒している、靴に爆弾を仕込む方法です。結局スパイはドイツ人で爆薬庫に爆薬と一緒に積み込まれた爆弾が1つだけ見つからずに爆発してしまい大爆発になってしまいました。こうしてみるともったいないですね。先日の大和といい、意味のない沈没の仕方をしております。うちのお客様で60歳以上くらいの方に何気なく聞いてますが、戦艦陸奥は男女問わず、大体の方知っていました。私は存在自体も知りませんでした。

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