前ページ

 

「愛に関する短いフィルム」 クシシュトフ・キェシロフスキ監督  1988年 ポーランド 

エンジニアかな(郵便局員でした)、孤独な状態というのはすぐにわかります。覗きが趣味かその対象が好きなのか、わかりませんが、かなり暇でエネルギーもてあましてますね。私は常づね思うのですが、覗き、ストーカーは冷静にコスト計算すると絶対に合わない犯罪だと思うのですが、なぜ多発するのでしょう。このケースは公務員でした。そして自分の部屋から望遠鏡で中年の女の部屋を覗いているので、オタクです。さらに友人の母と二人暮しで、母の方が若い女に興味がない息子の友達(施設に入っていた)を心配してます。なぜ?この中年を?相手も同じ孤独な人間だからです。類は類を呼ぶというわけではないのですが、行動の裏に隠された孤独が読めるから観ているのです。これが愛情に変わるのかな。しかしこの女が恋人と抱き合っているときは覗きはしません。なにか表面的な愛というのを覗き男は自分なりに曲解、理解しているのでしょう。二人がセックスしようとすると邪魔をします。ガス会社を呼びつけたりして。

この覗き(Aとする)の母は「女は無邪気に遊んでいるようで、本当は優しい男が好きなのよ」とアドバイスしてくれます。そして牛乳配達のバイトをして直接のコンタクトを求めていきます。しかしひょんなことから、自分で覗いていたことを告白します。するとその夜から女は窓から見える位置にベットを動かして電話を近くにおきます。そして遊びに来た恋人に覗かれていることを言うとその恋人にAは呼び出され、殴られます。しかし次の日牛乳配達をすると女と話す機会があり、なぜつけまわすの?と聞かれると「愛しているから」と答えます。そしてデートに誘い会話が弾みます。女も好奇心ありますからね。覗かれていたわけですから、なに見られていたか知りたいですよ。そして部屋に誘われますがその様子を友人の母が今度は覗いてます。しかしセックスに誘われてしまい、Aはそのまま逃げ出します。そして家に戻り手首を切るのです。しかしその事実を知ると女の方がAをいとおしくなります。遊びではなかったと知るからですね。そして、極めつけのシーン、退院したあとお見舞いにAのうちを訪ねるのですが、そのときにAは横たわって寝てます。そして何気なく望遠鏡を覗くと、そこには自分自身がいて、孤独に打ちひしがれている姿が映し出されているのです。その孤独を癒すかのようにAが手を差し伸べてくる瞬間が映し出されます。そうです、Aはこのような優しいまなざしで彼女を見つめていたのです。それを知るのが遅すぎました。

 

「悪霊島(あくりょうとう)」篠田正浩監督 1981年

久しぶりに金田一さんです。そして篠田監督です。あまり好きな監督ではないのですが。

舞台は九州と四国の間の島。景色のいいところですよ。大好きな場所です。これだけで見てよかったと思ってしまう。しかし役者が違うとこんなに違和感があるのか、と思うのも事実です。

たぶん本当のことでしょうが、恐山の「いたこ」のような霊媒師を四国のこの地方では「いちこ」というらしい。どちらも行ってみたいところです。刑部島と刑部神社共にあるなら行って見たいです。磯川警部と金田一耕介の目的がひょんなことから一致します。

この島に向かうのですが、当然この島は平家の落人伝説があります。そして「鵺」という鳥。からつむぎ、というらしい。私の場合、「能曲」で知っているので何の疑いもなかったのですが、「鵺」という鳥は別名みたいです。伝統芸能の流れですが、祭りで「人形浄瑠璃」をやるなんていいねえ。「神楽」はスサノオノミコト、

事件は少し入り組んでいて、監督のまとめ方が下手なので、わかりにくい人物関係です。

まあどうでもいいでしょう。シーンのつなげ方がうまくないと思うのです。また金田一シリーズの中で一番つまらないと思います。

しかしまたこの映画でも「原爆」が出てきたのは、なにか縁があるのでしょうか?最近原爆や戦争の事が出てくる映画ばかり観ております。

古尾谷の述懐という展開も気に入らなければ、ビートルズの曲が流れるのも気に入らない。この監督は、やはり「心中天網島」だけの監督です。60年代で安保闘争していた連中は好きになれません。これほど持ち上がらない「金田一シリーズ」もこの作品以外にはないと思います。もうちょっとおどろおどろしくなければだめです。この島は実存しないらしい。監督が日本の原風景を求めて作った架空の空間とのこと。この点では大成功をしております。

 

「穴(あな)」ニック・ハム監督 2001年

市川監督の作品ではないのです。市川監督の「穴」は大好きですがこれはどうでしょう。

ソーラ・バーチはまた髪を染める役ですね。高校生の多感な時期の金持ちの子供の話です。

余裕がありすぎると文化が生まれますがゴシップも生まれますわね。ゴシップの方かな。

ウェールズへの研修旅行に行きたくなくて、学校と親をだまして旅行に出かけます。それが防空壕の穴なんです。普通はウェールズのほうが良いのですが向うで特訓が待っているみたいでこちらに逃げてきました。アレンジしているやつがオタク系(B)でこいつが好きな女の子(A)と彼女の憧れの男子(C)を一緒にしてあげます。何かたくらみがあるのでしょう。3日後に迎えに来るといったまま、迎えに来ないのです。中の人間はあせります。

AはCと一緒に相談して、AがCのことを嫌いになるのを待っていると言います。CはBがAのことを好きなのか、と聞きますがその通り。嫉妬のなせる業なのか、と逆に仲が良くなってしまう。そして盗聴をしていると知って逆に中の悪い振りをする。これは危険です。本音が出てしまう可能性があります。

しかし成功、脱出できます。AはCの愛情も勝ち得ます。ここがおかしい。ここまで筋書きに入っている気がする。

しかしBの供述は逆です。AがCをくどき落とすために仕組んだと。まったく違うことを言います。

事実は監禁された中で3人が死んで1人が帰って来れたという事実です。

しかしこういう展開は映画としてかなりいけない行為だと思うのですが、実はAは乱交パーティーを企画してCをものにしようとしたのでした。しかしCがのってこないでAの友人の美人の女の子(D)ばかり男2人の目が注がれるので頭にきております。そして監禁状態を作ってAは好きな人と一緒に死んでも良いとさえ思っているんです。鍵を閉めたのはAですよ。そしてCと一緒にいられると思ったのです。事実仲良くなりますが、Dは死んでしまい、Cも友人を些細なことで殺してしまいます。そしてふたりだけになったときCからとうとう愛しているという言葉が発せられます。とりあえずこの賭けは勝ったのだと思うのですがなぜこの続きがあるのでしょう。

次ページ