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Cに真実を告白したら嫌われるだけでなくすべてが明るみに出るところでした。しかしアクシデントでCは死にます。確かにCの愛情を勝ち得るためにやったことです。しかし3人が死んでしまいます。Aは直接にはまったく手を出しておりません。唯一、Bを犯人に仕立てるために自殺と見せかけるときに殺します。Aも生きていても仕方ないのですが死なないということはCの面影を抱いたまま生きるのでしょう。後味の悪い、気持ち悪い映画です。まずこんなことは起こらないでしょう。

「殺人に関する短いフィルム」クシシュトフ・キェシロフスキ監督 1987年ポーランド

はじめにゴキブリ、ねずみ、猫の死体が出てきます。なんとなく人間がその死に関与している感じの死体です。猫なんか首吊りです。

話は3人の男を中心に進行します。若い男(Aとする)は何もすることがなく不安定な面持ちで街をふらついてます。映画を観ようとしても、時間が合わず見ることが出来ないし、絵描きに話しかけても、何が出来るのか、という質問に答えられません。逆に「木を育てられるか?」という質問を受けるのですが、「出来る」というと少なくても植木職人になることが出来るということを示唆されます。しかしそんな職業に興味ないのでしょう。そのあと、公園では鳩にえさをやる邪魔だとおばあさんにどけと言われます。居場所がないんですよ。歩道橋の欄干にたたづんでいると石が置いてあり、それを下に落としたくなります。下は車が走っているので、危ないのですが、落とすと案の定車にぶつかります。

もうひとりはタクシーの運転手(Bとする)住んでいるアパートの近くで自分のタクシーを洗っております。途中、お客が来るのですが、洗っている最中と断ります。客を選んでいるのか向かうところがあるのかわかりません。

もうひとりは弁護士の試験を受けている男です(Cとします)。彼は大学の後働いて勉強しているうちに、人生経験から弁護士の仕事の重さを認識し始めているのです。ゆえに答えは(口頭試問)深いものです。たとえば、犯罪の抑止には何が有効かという問いに対しては刑罰ではだめ、恐怖を抑止力とする、と答えます。理由はカインの頃から刑罰はひとの犯罪の抑止にならないというのです。この3人が交互に映し出されていくのです。

 

Aはある少女の写真を持っていて引き伸ばそうとします。そして街をふらつくだけ。Bは地道に稼ぐだけ。Cは弁護士に合格します。しかしAはたまたまBのタクシーに乗ります。それももしかしたらBのあとのタクシーになったかも知れないのですが運ですね。そして途中で殺します。めった打ちですね。死体は川に捨て車を乗って帰ります。まったく動機はないのです。あるとしたら彼女みたいな女を誘ってドライブに行きたかったことでしょう。しかし誘う女はタクシードライバーの近くの人で車を見たらすぐに誰のものかわかりました。さて裁判が始まります。Aの弁護人はCです。しかし完敗。しかし刑務所に護送されるときにCはAの名前を呼びます。そのあと、裁判官のところに行き、もっとベテランの弁護士なら判決は違ったか?尋ねます。変わらない、という答え。CはたまたまAが犯行の準備をしていたカフェに合格のあと、偶然居合わせていたのです。何をやるのか知っていれば、とめたでしょう。しかしそのときは赤の他人です。どうしようもないです。弁護士として初めてAと縁が出来たのです。この縁のめぐり合わせがCを悩ませます。そして死刑の日、CはAに面会に行きます。そして話を聞きます。するとAはあの名前を呼んでくれたことがすごくうれしかったと、そしてなぜ車を憎むかを話し始めます。それは友人とAが酒を飲んだ後、友人が酔っ払ってAの妹を引いて殺してしまったからです。それ以来、Aの歯車が狂ったと話すのです。人には、小さな出来事でもその人の運命を変えてしまう出来事があるのです。このように死刑の日になって饒舌に今までのことを話し始めるA。同情の余地はあるものの行った犯罪は紛れもなくAのなすところです。Cが弁護士試験で言っていたように、恐怖は抑止力にはこのケースではなりませんでした。意味もない犯罪です。恐怖なんかAは感じていなかったのです。そしてAの過去の悲しい経験がこの犯罪を起こしたのです。過去に妹を殺されたのも過失のある何の意識もない暴力でした。人間はもっと深い、わからない存在みたいです。なぜに暴力はなくならないのでしょう?そのことが疑問に残ったCでした。私は救われたのは最後に死刑の前にAの話をCが聞いたシーンです。ここが唯一、Aの人間らしい描写でした。本当に近くに生活しているのに殺される人、裁く人、弁護する人、犯罪者が日常的に関与しているのです。ここではじめのシーン、動物たちが殺されてます。どんな恐怖を与えても人間の暴力はなくならないのでしょう。それが人間みたいです。残念なことです。この作品は単品で見るより「デカローグ」の十戒のひとつ「暴力、殺人」としてみなければ内容がわからないでしょう。

「青空」 サトウトシキ監督 2000年

この作品はアダルトなので簡単に。最近、ピンク映画とも言われてますが、ピンクとは赤と白が混ざると出来る色なのですがそれがポルノを示すというのは、なんかうまいオブラートのような気がします。

そしてこれはポルノ映画ということですが、実は「いちげんさん」の方がエロい作品です。「いちげんさん」がむっつり助平なのに対して、こちらは、スケベが悩んだ映画でしょう。3作品手に入れてしまったので3回ほど、いつか何気なく書くと思います。

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