当然、彼氏の知るところとなり、「すべてのことを言葉で説明することは有益ではない」「神との対話のみが真実だ」「言葉で語ることを許されたと思うのは利己的な考え方だ」「言葉はその人そのものだ、慎重に選べ」みたいなことをいわれるんです。これじゃ好かれないですよ。しかし女教師のほうはどうしようもない、気づかなかった感情があふれ出てくるのです。最後に犬を埋めて自分もそのまま雪の中で寝てしまうが、パラグライダーの人たちに発見されてサーカスの女に連絡が入り二人は体をあわせて温めあった。すると救急車よりも早く意識を取り戻して二人の関係は完成され、女教師もサーカスについていくようになる。いわゆる氷に閉ざされた世界を破って外に出たのだ。この辺の展開は何か物足りないですが、そういう人生なんでしょう。まあ教師で神学教えているよりかはいい人生かもしれない。いや、客観的に良いというのではない、主観的に本人の気持ちのままに行動していることが良いのです。本当に見やすい、気軽な映画でした。ぜんぜん疲れません。サーカスのシーンも遊び感覚で気楽です。
「点子ちゃんとアントン」カロリーヌ・リンク監督 1999年
この作品も大好きです。この作品のスパイスはなんと言ってもお手伝いのおばあさんと家庭教師のフランス人でしょう。
点子ちゃんは、ちょっとお金持ちの家庭の女の子の愛称です。お転婆なんです。アントンは好きな男の子。アントンの両親は離婚しているんですが死んだことにしていて子供に父親に会わせないようにしております。それで女の手ひとつで育てているのですが途中で病気になり、代わりにアントンが小学生ながらアイスクリーム屋で働いているんです。それで学校では寝てばかり。
点子のお母さんはNPOみたいな海外支援活動ばかりしていていつも海外に出張ばかりしていて家にまったくいません。それで点子の話し相手はいつもお手伝いさんか家庭教師です。この家庭教師のフランスの女が馬鹿で遊んでばかりいるんですね。それはお手伝いのおばあちゃんもそうです。3人で楽しい毎日なんですが、お母さんがいないんですよ。でも楽しそうなんです。3人でフランスの歌を歌うところなんか最高に愉快なシーンですよ。
途中でこの3人の中で感じることは、「母親が海外援助に行っているけど、援助する人は国内にもいるし、自分の子供もかわいがらなくては」ということです。
アントンは母親思いで母は常に「夫は好きではないけど、夫がいたからこのアントンがいる」という優しい目で子供に接しています。しかしお金に困って夫に無心しているのを、アントンに聞かれます。そしてアントンはまだ見ぬ父親に会いに行きます。それは無謀なんですが、子供のさびしさには母親も気がつきました。
そして、点子はお金を稼ごうと街で歌を歌います。これも家庭教師の影響ですけどね。その歌が大ヒットしてしまいますけど、両親に見つかって中止。このあたりで母親も家族の大事さ、国内での援助を必要とする人の存在などに気がついていきます。
そんなときに、アントンは点子のうちに泥棒に入ろうとするのいち早くお手伝いに教えて、このおばあちゃんと二人の連絡で泥棒を捕まえます。
ここで、優しい心のもち主と知った点子の母親は(実は、アントンは出来心から点子のうちで盗みをしていたのです、これを点子の母親は許していなかったのです)アントンとアントンの母親を海に招待して(海で療養すると治ると言われていたんです、ここは深く突っ込まないこと)2つの家族が仲良くなったという、子供の心が大人を動かしたという話です。
監督は違うのですが「ふたりのロッテ」とペアでお勧めしたい作品です。楽しい映画ですよ。
「トリコロール」青の愛 キュシロフスキ監督 フランス 1993年
感動しました。私の宝物の映画です。これ以上言う言葉が必要なのでしょうか。
素晴らしい。まず、題名のごとく映像は青の色調です。車を一家で運転しているのですが、トンネルを越えるシーンで何かを越えたところに至ったのでしょう、事故を起こします。生き残ったのは妻だけで夫と娘は亡くなります。(目覚めたときに、夫よりも娘は?と看護婦に聞いたんですよ)そして夫の友人がビデオを持ってきてくれます。二人の葬儀のビデオです。ここから音楽はトランペットのテーマがかぶってきます。とにかく、いろいろなシーンで最終的に出来上がる音楽のモチーフの音楽が流れていくんです。本当にすばらしい展開ですよ。まだ、意識がはっきりしていないでぼんやりしていたときも青い光とともに「欧州統合のテーマ」の主題が流れます。まさに未完成の曲を作れという啓示のごとく、、、。
しかし、すべてを失った妻は夫の作った曲の内容は理解しているので楽譜は浮かぶのですが拒絶するがごとく夫の楽譜を写譜しているところに行ってそれを受け取り、廃棄してしまいます。過去を忘れたいのですね。夫のものはすべて捨てようとするのです。そして夫の友人を誘い抱き合います。彼女に好意を持っていることを知っていたのですね。「私だって普通の女よ」というせりふにはびっくりします。過去を捨てるとともに自分ひとりで生きる覚悟ができてきているんですよ。当然、旧姓に戻ります。この辺からメロディが少しずつ映像のバックに流れるようになります。
部屋を借りて、近くのカフェでアイスクリームとコーヒーを飲んでいると、近くで大道芸人がリコーダーを演奏しているんです。その曲知っているんですね。大道芸人には言いませんが夫の曲です。多分、楽譜をどこかで拾ったのでしょう。そしてこの大道芸人のおめがねにかなった曲だったのでしょう。