このような中、Bがの兵舎に訪ねてきます。そして信じられないことに次の日の朝5時まで一緒にいることを許されます。ここでの会話で思い出しましたが、純愛篇の冒頭ですがふたりは熱烈な純愛で結ばれたのです。愛はつよしですね。引き合うものが本当にあるみたいです。素晴らしい夜なのですがBは直感でAが戦地に行くような気がします。あたりますね、こういう勘は。
いじめも見ていくし、それを助けると自分がおかしくなる、という世界です。「ちょいと兄さん、寄って行って」と無理やり言わせておかまにさせて、そのあと体罰。精神と肉体両面からやられるのです。このいじめられた兵隊は普段はうまく立ち回れないのですが、うまくいい訳して逃げて自殺します。そのとき銃の使い方うまかった。この家族は母親と嫁が不仲でいちいちその不満を嫁が手紙で書いてくるのです。それを検閲されておりました。
「銃後が健全でないからだ、健全な家庭からしか健全な兵隊は出ない」すごい論理です。今ではまったく通らない論理でしょう。上司とすごい議論を展開します。「自殺に追い込んだ上等兵の暴力の糾弾」と「軍の秩序」の戦い。どちらも説得力があります。しかしAは個別に自殺した人間を追い込んだ男を糾弾しようとしますが、その暴力に訴えようとする時の目でいじめたやつは恐怖を感じます。真剣に生きているということは相手にもわかるんですね。冗談でいじめたやつを震え上がらせます。そうした中、友人となった男が脱走をしないまでも地元民の罪の捏造を見逃したとして逆に罪をきせられます。この辺のことはいくらかいてもわからないでしょう。
実際ぼやに乗じて逃げます、それをふたりが追うのですがAはもう一人の邪魔をしてこの男を逃がします。もう一人の男は都合が良いのですが、あの自殺に追い込んだいじめをした男です。そして泥の中で助けてやるから自分が殺したと告白しろというのですが、そこまで人間の告白に意味があるのかわからないです。実際この男告白以前に体力がなく死んでしまいます。このときのこのいじめた男の死は誰の責任でしょう?いじめたことと、そのいじめを認めさせるために救助を遅らせたことと違いはないのでしょうか?Aも昏睡状態に陥りますが目を覚ましたときに目の前にいる看護婦の美人なこと、なんと言う女優でしょうね。すごく印象深いかわいい子です。
「人間の隣には人間がいる」丹下一等兵が原隊復帰の時の会話の一部です。丹下一等兵とはかなり腰の据わったAのような男です。
そしてこのかわいいと思った子はAもお気に召していて女もAのことが気になります。それを怖い婦長が察しして今度も糾弾されます。そして前線行き。看護婦も違う前線に。別れ際に「会いたい人には会えるんだと、目くら滅法に信じる」と言って別れていきます。そして次へ。看護婦の女優の名前は岩崎加根子(俳優座の人みたいです)。
「人間の條件」小林正樹監督 1961年
第五部 死の脱出
第四部の最後「どんなことをしても生き抜いてうある、俺は鬼だ」というのは何人殺しても俺は生きる道を選ぶということでした。敵の中、味方は数人。ひとりの見張りを殺せば、突き抜けることも可能な状態。結局誰も行きませんし、Aが鬼になるといったくらいですので殺しに行きます。3人はどうにか逃げたもののつかまるのは時間の問題。
ところでこの5部から音がかなり良くなりました。戦後のこの2年間は大きかったのでしょう。あと追記ですが、この映画は俳優がかなり良いです。クレジット見ているだけで凄いと思ってしまう。
逃げる途中に民間人と出会います。その連中も一緒に連れ立つのですが、食料を持っていないので、すぐに食料がなくなります。そこで軍を罵倒するもの、一緒に生きようとする老齢のご夫婦など人間のいろいろな様子が描かれます。ここでもAは試練を与えられるわけです。
そして森の中をさまよい、荒野をさまよい、最後に賭けに出た日の前日に最後の食料をすべて食べて出かけます。ほとんどの人はついてこれない。そしてAも信念が揺らぎ始めます。しかしやっと人の気配が感じられて、ついたところは?
また嫌になるくらい試練が待っております。「なぜ最後の突撃をしなかった」と言われます。「みんな玉砕したはずなのに、なぜ生きている」。
それで切れたA.。相手の考えが良くわかっているのです。それは食料欲しさ、そして逃げ道の模索でした。そのまま合流せずにまた分かれます。しかしあの3部で病院で一緒だった気骨のある人間に再会します。彼(E)はAの方について来ます。ここのシーンなんか、見ていて、「まだ生きていたんだ、良かった」とこっちが思ってしまうほど、うれしいシーンですよ。
しかし中国人に道を聞いたら革命軍に包囲されてしまいます。なんでみんな銃を持っているのか?という疑問がAに生まれるのですが、戦うしかない。そのときに戦法として中央突破を考えます。いつもこの映画ではそうでした。中央突破はリスクが大きい反面、相手も突破されたら体制が崩れる利点があります。逃げようとしたなら包囲されてしまいます。
「くだらない自由を高い金出して買っているのかもしれない」というEの言葉は信憑性があります。冷静に考えて、ロシアと中国が攻めてきているのでいつかは捕まるのです。逃げおおせる場所ではないのですし戦争が終わっているという確証らしき記号はあちらこちらにおちています。