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時は過ぎ、精神病院の収容所で仲間と映画を見に行くシーンがあるんですが、ここで映画でなくて悪い商売するやつがいて、売春宿に連れて行くんです。すごいテーマですよね。養護が必要な人の性を扱ってます。ここで、かつてのサーカスの雰囲気、父とクモ女のことを思い出すんです。匂いでしょう。そんな中、母が現れて息子を支配し始めます。(オー・ド・ヴイに似てきました)  では、かつてクモ女と逃げた少女は?というと売春させられていたんです。そんな中、客がスキを見せた瞬間に逃げていくんですね。ここがすごいのですが、たまたまいないときに少年はクモ女に仕返しに来るのです(父と母の仇ですね)。もうメッタ刺し。「サイコ」もびっくりの殺し方ですね。そして、あの友人であったこびとに会いに行くんです。そして母とこびとを中心に一座が組まれドサまわりが始まります。見世物は「母の後ろから母の手の代わりに手を出して一心同体で演技をするのです。もう母からの束縛からは逃れられないというか、同化してしまうんですね。見世物の主題も人間の原罪について、蛇に責任があるという、またヘンな説得性を劇的に見せます。(ここでも「神曲」のテーマが出てきてしまいました)さて少年の方は一座の女に手を出してコンビを組もうとするのです。その出し物はナイフ投げ。父親と同じです。まったく同じことを繰り返すんですね。人生ってそんなものかもしれません。そのナイフが飛んで突き刺さる音がまた良いんですよ。しかし母が許す訳がありません。手となれと命令すると同時に女にめがけてナイフを投げろとなるのです。当然、少年は実行するのです。ここでいい話が一つあるのですが、いつも死体はすぐにえさになっていましたがここでは墓まで運んでペンキを塗るのです、ペンキがかかるとえさにはならない訳で、埋めると白鳥となって魂が飛んでいくんですよ。この辺はセンスいいですよ。そうこうしているうちに一座は成功して劇場と家をもてるようになると満ち足りた生活に入るのです。ピアノを弾くのも一緒。ピアノを演奏する手に後ろからなる訳ですからもう性交渉の体位と同じです。やばい。という構図ですね。そんな自分の存在が嫌で消えていなくなりたいのですよ。それで透明人間になろうと実験する材料を買いに行くとき街で「世界最強の女が来る」という宣伝カーに出会うんですね。その瞬間男根は蛇に変身する幻想にとらわれるので性的な抑圧は相当ですね。当然そのショーを見に行きます。そしてレスラーの楽屋にバラを差し入れに行き、自宅まで招待するのです。このレスラーはおっぱいはあるけど、どうみても男なんですよ。肝心の股はぼかしが入っているので事実はわからないのですが、男でしょう。そして自分の劇場で仕込んであるマジックをやろうとしても母が出てきてしまうんですね。そして「殺せ」と命令するのです。ですから殺せというからにはやはり女なのでしょうか、あのレスラー。少年はこのレスラーを呼んだのは、強さにあこがれていたのではなく、戦うことで自分の腕を折ってもらいたかったのです。当然形成不利ですが、やはり「ナイフを使えと」命令されてぶった切るのです。このときはさすがに少年も絶望感があったでしょうね。やはり墓まで運びペンキを塗っていると、今まで殺した女の亡霊がすべて墓からでてくるんですよ。かなり殺してますね。(これ監督のインタビューでは実際にあった事件を脚色したらしい、その犯人は更正して社会復帰しているとのこと、メキシコらしいですね)もうみんな裸なんでぼかしが画面を被い尽くします。その亡霊に謝るんです。当然、一緒になってもいいと思った人たちですから、ただ、母の命令で殺しただけですものね。

亡霊から逃げて家に帰ると、劇場で聞いてきた少女が家に侵入していて、昔サーカスにいたころの化粧をして待っているのです。(すごくかわいい子なんですがね、化粧するとピエロです) 当然二人は愛し合うのですが、母の邪魔が当然のごとくはいります。「腕を切れ」と。このときに近所の人が遊びに来て、死体とか見て尋常じゃないと警察を呼ぶのです。少年は少女を殺す一歩手前まで行くのですが、少女は無抵抗です。そしてやっとのことで母を刺したのです。

ここからがすごいんですが、母を刺したら、母の化身が「私は殺せない、なぜならば、おまえの中に私がいるからだ」と言って消えていくのです。そうなんです、私もまたまただまされました。少年が操っていたのは母の人形だったのです。少女は少年の境遇を知っているし、すべて昔の思い出となるようなものを焼き尽くすんですよ。すごいやさしい愛情ですよ。すると座員はすべて喜んで祝福してくれるんですが、こびとは去っていくんです。きっと友人が欲しいという夢から、存在させていた幻影だったんでしょう。少女の深い愛は、父の形見の刺青の束縛も「鷹」を飛ばすことで取り去ってくれることでも示されます。そして警察に罪の償いに行けと。たぶんいつまでも帰ってくるのを待っていてくれるんでしょう。すべてのトラウマから開放され警察に逮捕されるところで映画が、きれいな音楽と共に終わります。なんという、素晴らしい、映像と独自の世界を構築したのでしょうか、この監督はかなり面白い監督です。人には薦められませんが、印象に残る映画です。

 

12/2 「火まつり」 柳町光男監督 1986年 冒頭から「山の生活者」の生活描写です。いわゆる、山の神のもと、仕事をしているきこり達です。でもこの映画全体にですが西洋文化がこんな田舎にも浸透してきている様子がすぐに出てきます。ここでは青年がコロンをつけるシーンですね。(ほかにも鉄道のレール、これは勝浦と新宮がつながったの最近だったと思います。最近と言っても20から30年前ですが。これ記憶ですので信じないでください。また、はまちの養殖のシーンも西洋化というか、近代化の流れの象徴でしょう。さらに移動の生活雑貨販売車が来るんですが、漁師の奥さんが率先してフランスパンを買いに来るんですよ。このようにいたるところで西洋化近代化の象徴が出てきます)山の者は、普通はコロンではなくて、おこぜ、を持っていくんですよ。そうすると山の神様に好かれるんです。まあここでは街の女に好かれるためでしょうから仕方ないですね。(なぜ、オコゼか、これは映画とまったく関係ないですが、山の神様は女なので、自分より不細工なものを見ると喜ぶとか言われたりしてます。このことに関するシーンも実は後ででてきます。見ていて結構研究されているなあと驚きました) 舞台となっているところはわかりにくいのですが、途中女が「新宮から船で来れば目と鼻の先なのに」という言葉がありましたので、那智から新宮にかけてのどこかでしょう。二木島らしいです。実際に那智とか行ってみるとわかると思いますが映画のように山のものと海のものが接近してます。那智の浜(きれいな浜ですよ)から那智の滝(飛瀧神社)まで歩くとわかりますが、かなり海から山へ変化します。そういえば途中、南方熊楠が研究していたいろりもありますよ。熊野古道の途中です。そうして、山のものの生活の中で獲物を取る仕掛けなんかあるんですよ。これはいいですね。榊使ってしまうんですが、おかしいと思ったらあとで、映画の中でも「山の神様に失礼なことをして、、、榊は神様の木だ」というようなシーンがあるのですがこのシーンは事実ですね。謝るために仕掛け作った若者は下半身を脱いで男根を山にさらすのです。これで女性たる山の神の気持ちが収まるというシーンです。わかりやすいシーンですが、まったく知らない人は何やっているのかわからないでしょうね。あと獲物の血を体に塗りつけるのもそうですね。できれば心臓をくりぬいて山の神にささげると良いのかもしれませんが、熊野ではそのような習慣はなかったのかもしれません。また山の仕事が暇な時はしし狩り、するのですが、犬(那智のいち)を使ってしし(いのしし)を追い込む狩の仕方は実は私も知りませんでした。その映像も出てくるので、貴重かと思います。酒をささげて、拍手を打って狩の豊漁を祈るシーンもあります。まあしし狩はいまでもやっていますし、以外と身近に鉄砲の音聞こえますよ。と言うと凄いようですが、実際熊野は近くにあって、まったく違う世界のような気がしてならないのです。本当に旅行するたびに思いますが大変なところです。映画の中でも随所に出てきますが、裸でいるということが自然なんですね。「オー・ド・ヴイ」で書いたように自然の中に人間の裸は溶け込めないのですが、自然と密接に関係している仕事をしている人は無意識に自然に同化しているんでしょう。さらに性のおおらかなところは、夜這いなどでも明らかですし。このおおらかさは共同体の中だけなんですよ。ですから海のものと山のものが交じることはないと思います。 この映画のポイントとなるのは塞の神の位置でしょう、きっと。 しかし映画で、すごく重要なことですが、山のものと海のものが親友なんですよ。そして山のものは昔かたぎ(「山の神様はおれの彼女だ」と言い切るのですよ)で、海のものは遊び好きですが仲がよく二人の距離感がたまらなくいいのです。親友というのはこういうものだよな、と思えますね。あと重要なことだと思うんですが、この二人を中心に稚児教育のような状況が生まれているのです。こういうことは重要なんですよね。人から人へ直接的に教え込まれることは忘れないんですよ。さらに男だけの世界ですので、山の神とも相性はいいのです。山の神のやきもちの様子は「森のざわめき」で映画の中では表現されてます。特に新宮から戻った女(山のもんの初恋の女)が現れてからひどくなるんですね。特に山のものの大将は自然を、神を、体で感じることができるので敏感になるのです。山のものは、この神=自然が海中公園で壊されるというのを無意識に感じているんだと思います。 そんななか、養殖のハマチが油を撒かれて全滅するという事件が起こります。実際は、この映画の中で持ち上がっていた海中公園の建設の話と深く関係するのでしょうが、海と山の塞、境目が危なくなるんです。実際に目に見える道路などの境目ではないだけに事は重いですよ。その件の疑いが海中公園に反対していた山のものにかかるんです。しかし、本当は、山の気持ちよくわかるから反対していただけなんですよ。それで、うみのもんの親友と一緒に海神の神社の近くの聖域を泳いだり、裸になって男根を突き上げたりするのです。するとそのときから大漁続きになるんですよ。実際に映画の中で漁師の奥さん達が暇そうに余りもののイセエビばかり食べてました。おいしそうですよ。ここの辺の行動は、山のものは知っていて行なっているんですね。そして、山に仕事に行ったときに嵐になりそうになるんですそのとき仲間がみんな山から下りたのに、一人残るんですね。儀式に近いことをするのです。それは大木に抱かれて、男根をこすりあげるのです。これは実際に良くあることらしいですが、映像としても入っているので、ここでもかなり研究しているなあと思いました。そのなかで山からの水をいただき、奥深く入ろうとすると、山から入るな、という合図ももらえるんですね。危険ということです。ここのシーン、普通の人はわからないと思いますが、この嵐の中で山のものは、山=女とかなりの交流をしたのですよ。その山=女の気持ちを持って男の祭りである新宮のお灯祭りに参加します。大事なことが一つありまして、その前に初恋の女でバーの売春女がいるのですが、うまいこと金を作って新宮に戻ってスナック買い取っていたんですね。実家のあったところに逃げていたときには山のもんと肌の交流があったのですが、新宮では商売も絡んできて、山のものが遊びに行っても、女を所有できないんです。客として帰らなければ、次の日の仕事ができないので、山のものも帰るのですが、帰り際に「お灯祭りに来てね」と言われるんですね。ですから、山のものにとってお灯祭りは初恋の心に残る思い出と山の神の二人の女がかかっているのです。その女たちを背景に男として出て行っているんです。初恋の女に対しては純粋な気持ちと、山の神に対しては本当の恋人としてですね。ですからお灯祭りの参加者がもどかしくて仕方ないんです。そんな描写もでてきます。関係ないですが、新宮の神倉神社本当に良いところですのでぜひ一度はお出かけください。そういえば、映画の中で新宮のシーン、クリスマスでした。本当に似合わない風景でした。 お灯祭りでけじめつけたんですが、海中公園の問題がとうとう家族で決定しなければならなくなったとき、季節は春、ということはお灯祭りから2ヶ月くらいですね、男は山の神が女でほかの家族もすべて女性だったのでいらないものとして海中公園にしようというのを無視して男に逆らうものとして全員殺します。子供まで殺したので(お灯祭りに参加したのにねえ、と思いましたが、直接の描写はないですよ)お家断絶ですね。最後に男としての責任をとるんですが、心臓を撃ちます。心臓を山の神にささげるのですね。自分が生贄で、山に神への捧げ者となったのです。心臓を切り抜いて捧げることは先ほども書きましたがそのとおり実行します。これはかなりいいシーンですよ。するとね、島に来ていた移動販売車とか金物師も去っていきます。いわゆるよそ者が去っていくということです。不吉な土地となったところで商売しても仕方ないですから。さらに人の影が映り(まあ写らなくても良いんですが)油がまた流れて魚が死ぬんですね。海のものたちはみんなで呆然とその油と魚の死骸を見つめます。そこに夕日が後光のように差し込んできて海に浮かぶ重油に光り、映画が終わります。まあこの島に魚は戻らないでしょう。守ってくれた人(山の神)の友達を殺したようなものですからねえ。まあ今ごろ気づいても遅かりし、、、 この映画って普通の人は、わからないんじゃないでしょうか?私みたいに旅行ばかりしているとすぐにピンと来るんですが、結構難しいですね。しかしいい映像ではあることは間違いないです。映画としてはつまらないと思う人のほうが多いことでしょう。私はこの監督の山ノ神の考え方はわかりやすいと思います。そういえば、書き忘れましたが、境は山から海まで実はなかったんですね。ですから親友同士という二人が一番わかっていたんでしょう。自然を。

12/2

 

「ウィンタースリーパー」 トム・ティクヴァ監督

人物が錯綜しますので記号を与えます。まず4つの大きな流れがあります。1は女同士の関係をA1とA2とします。前者は映画からドイツ語への翻訳家、後者は看護婦。2は恋人同士。A1と男のA3で男はスキー教室のインストラクター。3は男。Bで後にA2と知り合いになります。4番目の関係はある家族でCとします。中でも3人兄弟の一人の女の子をC2、その父親をC1とします。

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