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いい映画ですよ。子供というのは親を選ぶといいますが、今回の映画でも、どの親の下に生まれようか選んでいたんですね。そして運命は子供を持つにふさわしい二人をいろいろな人間関係の錯綜の中から見つけ出したのです。別にA1と3でもいいはずですが、ふさわしくないから一人は死んで一人は孤独の中で映画は終るのです。親になるのにふさわしい夫婦の愛情があること、お互いが信頼しあえる関係であること、お互いが自分達に責任をもてること、などが些細な事件や出来事を通してA2とBが一番ふさわしいという結論になる過程を見せることで映画が成立しているのです。人生なんてそんな、見えない糸で結ばれていると思うし縁というのはそんなものです。題名の意味は冬の間に起こった事件ですし、その間にはぐくまれた新しい命が動き出したことと、なくなっていった命が眠りについたこと冬眠を意味すると思います。すなわちあの世(冬の間)での魂の遍歴を示すのです。冒頭で狂った歯車がA3の死で元に戻るのです。記号を使ったくらいちょっとわかりにくいですが雰囲気だけ観ていてもなんとなくわかるような映画でした。お勧めはしにくいかな。

12/3

 

「ミシシッピー・バーニング」 アラン・パーカー監督 1988年

そんなに最近の映画だったっけと思うような、製作年数ですね。となると、この事件と現在とのちょうどい半分の時点でアメリカをかなり旅行しているのですね。それよりずっと後の映画ですね。とにかく当時心に残った映画で、結果を知っても何回も観ております。最近の「L.Aコンフィデンシャル」(もう数年も前ですが)と同じようなテンションのよい映画ですね。

今思うと、初めに黒人と公民権運動家が撃たれた所から始まったのが良かったですね。良いスタートです。そしてたたき上げ(ジーン・ハックマン)とエリート(ウィレム・デフォー)の登場です。結果ですがFBIがこんなに力ないものなのですかね、と思います。事件のあった街に入ると異様な雰囲気です。レストランもカラード専用とホワイト専用があります(そういえば昔アメリカに行ったときに、これは確かに気をつけていた記憶があります)。ここで思うんですが、黒人は奴隷としてアフリカから人身売買で運ばれてきたので、以外とルーツとなる社会基盤を持っていない気がします。アメリカに移民したイタリア人やアイルランド人は自分の国のルーツとなる組織基盤持ってますよね。それが努力して成功すると成功できない白人のねたみを買うことになっていくんですね。映画の中ででてきた言葉ですが「クロに負けたらおしまいだ」という言葉や「プアーホワイト」という言葉、さらには「憎しみは生まれつきではないの、教え込まれたの」という台詞に表現されてます。しかし創世記9章27節とはなんなんでしょうね。KKKの根拠らしいんですがあまり興味ないので調べてません。しかし努力しないでみんな運命のせいにしたり、色の違いにしたりするところに問題がありそうです。KKKからするとユダヤもカトリックも東洋人もダメなんでアングロサクソンのデモクラシーを作るということですので当時生活していた被害者は運が悪かったのでしょう。焼かれる十字架がKKKの天誅の証ですがどういう意味があるのかは知りません。人間の弱い心に起因するので宗教の議論は別の問題であるはずです。しかし移民させられた黒人もキリスト教を信じるということはかなり説得性、普遍性があるんでしょう。そしてなんとなく、黒人聖歌の意味がわかりました。素直に表現できなかった信仰心を歌を変えることで維持したのですね。そういえば日本も同じですもの。遠藤氏の小説「沈黙」などはパライソと歌う唄出てきますね。たぶん同じ事だと思います。変化させた部分と変形した部分と両方あるのでしょう。

そして冒頭のレストランですが黒人のおびえ方はすごいですね。さらにFBIに話し掛けられた黒人はあとで被害を受けます。この事件全体は結果としてエリートの正義感で解決のきっかけをこうして作り始めるのですが、解決したんでしょうかねえ。しかし被害を受けた黒人達はかかわりを持ちたくないんですね。すごいのは、証言に立ってくれた黒人少年がいたにもかかわらず(かなりの勇気のある少年です)裁判は負けたのです。FBIが負けたのですね。この映画の中に関して言えば、この裁判で黒人達もかなり切れましたし、KKKのメンバーも焦りからか迫害を増します。FBIもかなり決意を固くします。転機ですね。次にKKKの幹部の妻が裏切ったときにこの3者の緊張は高まり頂点を迎えます。FBIが実力行使です。どうするのか?たたきあげの手法が使われますが、おとり捜査です、それが違法かどうかの議論は別としてここから畳み掛けて面白くなることは事実です。本当にいいですよ。黒人の知り合いに黒人の仕返しと思えるような演技をさせ、KKKの幹部を脅します。すると当然、誰かが裏切ったと思いますね。先ほどのようにKKKは緊張が頂点ですのでお互いを疑い始め、たたきあげのFBIがわざとほかのメンバーがいるところに落としやすい犯罪に加わったメンバーの一人に約束したかのように訪ねればOKでした。さらにはこの訪ねた男(自分でも周りから疑われたと思っているので)にKKKの裏切りの儀式と思わせればすみます。すぐに自供しました。あとは芋づる式で逮捕できたのです。しかし最後のほうで「見てみぬふりをしたものすべては罪」という言葉が出てくるんですが事実だと思います。感想としては、黒人の迫害場面で黒人聖歌がかぶるシーンは秀逸です。次はアングロサクソンアメリカから流れでマイケル・ムーアを見てしまいそう。

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