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「発狂する唇」 佐々木浩久監督 2000年

もう、なんでもありというきわめて映画的な映画です。しかしテーマがかなり危ない反社会性があるので書くのをためらいました。まず、舞台となった家が最低な条件で「息子が連続首切り通り魔殺人事件の容疑者で、2、かつ、昔、死刑になった」という環境設定です。そして母親と娘2人の構成で、事件の異様性からマスコミに囲まれて逃げ場がない状況で追い込まれた家族が主役です。結局ここに絡むのが霊媒師一味とその霊媒師を追うFBIと名乗る一味というだけです。霊媒師は商売にしようとたくみにこの一家に取り入り、性的な奴隷と母親と妹を仕立て上げます。そして実際のオカルトっぽい感じで殺された霊を呼んでみようとするのです。しかし、霊を呼ぶのは危険だった。それは死んでから49日たっていなかったからで、やはり、死体が首なしででてくる。霊媒師はそれらを「使い魔」として自分の首を捜しにいかせる。そして霊媒師一味は深く入り込むために、事務担当者を使って奥さんに取り入る。そして深い関係になるのだが、奥さんのほうが病み付きになっていく。その後、妹のほうも深入りしていく。結局、誰も寄り付かない非社会性が完成しているのです。とにかく映画の中で出てくる、この家に出入りする人たちがおかしすぎる。このどうしようもない関係で姉のほうはおかしくなって家を飛び出していくのだが、公園で刑事に捕まり、犯人を知っていると問われると不快感とともに念力で刑事を殺してしまう。そのとき、「使い魔」を手段として使い、念力で殺す。それを霊媒師一味をおかしいと思っていたFBIが事情を姉に話して捜査に協力しろと説得する。すると、あろうことか、「歌を歌いだす。(それは背景が横浜の山下公園から港に見える丘公園に渡って行われます)20世紀ノスタルジアみたいです」この辺で気づくのですがこの映画いろいろな映画のパロディが多いですね。このあとの事件担当の刑事のリアクションがすごく、そのまま、家に殴りこみ、姉を犯そうとするのです。死んだ刑事の仇らしい。どうしようもない展開。そうすると、刑事のほうは殺され、硫酸で溶かされる。(地獄の貴婦人みたいです。)もうなんでもありの展開で、刑事が家に入ったきり出てこないしおかしいと家を取り囲んでいたレポーターは家に飛び込み取材を開始するが、みんな殺されてしまう。この辺で普通の人は見ないと思いますが、この殺し方はフユーリーとかキャリーみたいなものです。そして霊媒師一家とこの家族は5人で出かけるのですが(だいたい、事件の現場がわかってきたから)そこには兄がいるのです。そして殺された女の子の家族も揃っているのです。実は霊媒師と兄が仕組んだもので、実は母親と姉たちが殺して首を切っていたというものでした。この家族の女たちは何かにとり付かれていたのです。そして、霊媒師一家はこの呪われた血が必要とここまで仕組んでいたのです。もうこの辺からさらになんでもありで、この被害者の家族はみんな殺されるのですが、最後に残った姉と兄の間には子供ができているのです。この子供どうなるのでしょう。なにか宇宙に連れ去られたみたいです。どうでもいい、という感じで書いていて嫌になってきました。まあ、何でもあり飛躍性は映画的で画面が笑えるというのは映画ですね。まったくお勧めしませんが、見ていて自分がまともに思えました。そういう効果はあるかもしれません。

 

12/5

「トリコロール」青の愛  キュシロフスキ監督 フランス 1993年

 

感動しました。私の宝物の映画です。これ以上言う言葉が必要なのでしょうか。

素晴らしい。まず、題名のごとく映像は青の色調です。車を一家で運転しているのですが、トンネルを越えるシーンで何かを越えたところに至ったのでしょう、事故を起こします。生き残ったのは妻だけで夫と娘は亡くなります。(目覚めたときに、夫よりも娘は?と看護婦に聞いたんですよ)そして夫の友人がビデオを持ってきてくれます。二人の葬儀のビデオです。ここから音楽はトランペットのテーマがかぶってきます。とにかく、いろいろなシーンで最終的に出来上がる音楽のモチーフの音楽が流れていくんです。本当にすばらしい展開ですよ。まだ、意識がはっきりしていないでぼんやりしていたときも青い光とともに「欧州統合のテーマ」の主題が流れます。まさに未完成の曲を作れという啓示のごとく、、、。

しかし、すべてを失った妻は夫の作った曲の内容は理解しているので楽譜は浮かぶのですが拒絶するがごとく夫の楽譜を写譜しているところに行ってそれを受け取り、廃棄してしまいます。過去を忘れたいのですね。夫のものはすべて捨てようとするのです。そして夫の友人を誘い抱き合います。彼女に好意を持っていることを知っていたのですね。「私だって普通の女よ」というせりふにはびっくりします。過去を捨てるとともに自分ひとりで生きる覚悟ができてきているんですよ。当然、旧姓に戻ります。この辺からメロディが少しずつ映像のバックに流れるようになります。

部屋を借りて、近くのカフェでアイスクリームとコーヒーを飲んでいると、近くで大道芸人がリコーダーを演奏しているんです。その曲知っているんですね。大道芸人には言いませんが夫の曲です。多分、楽譜をどこかで拾ったのでしょう。そしてこの大道芸人のおめがねにかなった曲だったのでしょう。

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