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全編を流れるマーラーの音楽、特に交響曲第4番の方はすごくいい印象を映像に与えております。「大地の歌」の方も良いのですが。ちなみに仮面をつけた戦いの曲は、ベルリーニの「ア・タント・ドゥオル」から「多くの悲しみに」だったと思ったけど、ちょっと自信なし。ソプラノの方はベルディの「椿姫」の「花から花へ」です。ここでテノール部分をカーテンから隠れて歌って観客を驚かせると共に愛を確かめ合ったのです。

 

「カルメン」 映像監督ブライアン・ラージ、ジェイムズ・レヴァイン指揮 MET アグネス・バルツァ、ホセ・カレーラス  1987年

 

あまりに有名なオペラですね。映画ではないのでかなり詳しくソリスト書きました。まあ一言、映画と違って舞台は観客は自分の好きなところを舞台の上で見ることができるのです。しかしDVDのようなパッケージになると映像監督が編集した部分しか舞台上での出来事は見ることはできません。これははっきりいってよくないことです。舞台上が映画でいうスクリーンなんです。

まあそんなことはおいておいて、簡単なストーリーと感想を。

セビリアのタバコ工場の前。ミカエラという娘がドン・ホセを探しに来る。しかし、ホセが来ない間にカルメンが休憩で出てきて、たまたま目が合ったホセを一目ぼれする。(本当はこれが大事だったんです)ホセもまんざらではない。しかし、ホセはミカエラと結婚するつもりでいる。それを知ってカルメンが騒動を起こす。(カルメンはホセが同じ故郷のナバーラ人と知ってまた好きになる)しかし騒動の始末をカルメンはしなければならない。ホセに逃げられるように頼んで逃げる。逃がしたホセは1ヶ月営倉に謹慎させられる。

その間カルメンは酒場で踊って歌って楽しく過ごす。本当にいい場面ですよ。(「踊りと歌は一体」という場面、このプロダクションはそんなに盛り上がらないが。しかしこのシーンを最高に表現できるプロダクションがあるのだろうか?すべての人材がそろっていなければならない)そんなところに闘牛士のエスカミ―ユョが現われ、カルメンに一目ぼれする。カルメンの気持ちはホセなので、そっけない態度。さてホセが帰ってくるとカルメンは待ち望んでいて愛の最高のシーン。しかしカルメンは「仕事より愛」すべてを捨ててまでも愛を優先、ホセは「仕事は仕事」愛への思いが違うのだ。変な男のプライドがあるのだ。カルメンは好きならどこまでも一緒に逃げようという。ここで食い違い別れようとする。しかし将校が来てしまい、カルメンが好きなのでホセにはもったいないと決闘になりそうになるがカルメンと密輸仲間が止める。そして、ホセも密輸仲間と逃げなくてはならない運命になる。ホセもあきらめてカルメンと一緒に逃げる。ここまでの第二幕はいい曲の連続で最高です。

密輸団が逃げているとき、監視員がいて隠れているがここはホセの実家の近くである。母のことを思い出しているのだ。それをみてカルメンはうまくいかない運命を悟る。実際にミカエラはホセを追ってここまで来ているし、エスカミーユョもカルメンを追ってきている。たまたま出会ったホセとエスカミーユョは決闘しようとするがとめられる。このころから気持ちがエスカミーユョに少しずつ向かっている。さらにホセは母が危篤と聞いて母のところに行ってしまう。

闘牛場の場面、もうカルメンはエスカミーユョと一緒になっている。ホセは影から見てどうしてもカルメンとよりを戻したい。もうこのときのホセはプライドもないし、カルメンも気持ちが変わっていた。しかしホセは自分の気持ちが癒されないとしてカルメンを刺して終わる。

こんな話ですが愛は具体的にはアリアとしてはカルメンとホセの二人にしかないのです。

話とするとホセの優柔不断さがすごく気になるのです。もっと受け止めろよ、と思うのですが、よく考えると、ホセには愛とともに母やいいなずけがいるのですね。それを壊したのはカルメンなんです。カルメンは根無し草なので気楽なんでしょう、しかしどこかに寂しさがありその裏腹に強い愛情を相手にもとめるのです。後から出てくる闘牛士はまさにうってつけです。しかし運命はいたずらをしますね。その男と女の縁の皮肉さが歯がゆいんですが、だから面白いのでしょう。

この舞台についてはバルツァは好きなメゾでこの役は適役だと思います。もう少し若い方がよかったと思います。ホセはまさに適役。ほかの二人はちょっとイメージが崩れるくらい。しかし、よくこの舞台見ればわかることですが、上演できるオペラハウスは少ないでしょう(「アイ―ダ」なみに大掛かりです)。まずトスカみたいに絶対的にメゾに魅力とテクニックがなければ成り立ちませんし、かなり踊れなければ務まりません。またダンサーや子役もたくさん出てくるので大きなオペラハウスしかできないでしょう。その点METは問題なくこなしてます。しかし、衣装も含めて何かが違うんです。私自身このオペラは実際に見たことがないですし見る機会も多くないです。そのため、あまり大きなことは言えないのですがもっと踊りを多くして、舞台全体に躍動感がほしいです。しかし一度は見てみたいオペラですね。今だったらどこのオペラハウスができるかな。カルメン役はバルトリがよさそうですね。

 

「奇跡の海」ラース・フォン・トリアー監督 1996年 デンマーク

この監督、やはりやばい監督だと思う。ウドキアーとか使っているし、内容もきつい映画が多いです。この作品だけ、廉価版が出てしまって処分できなくて持っております。しかしもう一度見てみることにします。私のエミリーワトソンへの印象もこの映画で変わってしまったのです。

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