ここで重要なのはBはAに会いに行かなければ何もなかったのですが、ここで会い話しているうちに女一人に男二人どちらかが死ねばいい、という話になるのです。その晩帰ると夫のほうも準備していて、都合よすぎるくらいに東京の会社を手伝いに行かせます。まるでABの逢引を幇助するようなことです。そしてAはBの後をつけてBに殺しの件を伝えます。やはり家庭に帰ると夫なので、いざ殺すとなると躊躇します。Aは独り者なので自分勝手に話を進めようとしますがBはそうは行きません。そこに夫が来てしまうのです。というより一応確認のために来たのでしょう。案の定男がいたということ。ここで夫は離婚しても良いと思います。「出てっても良いんだぞ」とは言いますけど、離婚するとは言わない。なぜだろうか?諭すのです。「あんな半端ものと一緒になって幸せになれると思うか」とね。Bも答えはわかっているので、反論できません。しかし夫はよくホステスと飲み歩いていると思うんですが、真剣にならなければ良いということでしょうかねえ。まあこの場合は夫が粋な計らいで「やり直そう」と新婚旅行気分でホテルの予約をしてくれました。そのサプライズに驚いていたときにBの頭の中でいやな予感がめぐります。このままやり直したほうが良いのに。
その予感どおりにその晩、Aから殺しの合図がかかってきます。この映画の特徴はこの緊張感にあります。なぜ緊張感がみなぎるのか?女性は意外とすべてを受け入れることができる存在なのですが男はそうは行きません。その優柔不断な女性が判断できないままに男が直感で動いてしまうのです。それに流されてしまう女。戸惑う女、そんなことから、あの時やめれば、とか言う後悔などとともにすごい緊張感が生まれます。次にこの女は何を選択するのだろうか?というような感じです。
結局、殺人はこのホテルで行われるのです。この後はどうなるかはわかりません。実話ですと二人とも捕まったそうです。映画の中でも夫が死んだときのBの反応はすごかったからねえ。遊ばなければよかったのかもしれないし、Aも極端に走らなければよかったと思う。ただそれだけ。でもいすごく面白い映画でした。この監督で一番良いのではないかなあ。
「新宿黒社会チャイナ・マフィア戦争」三池崇史監督 1995年
この映画は初期の作品ですが、逆に私は好きな方の作品です。「フルメタル極道」とともに良いですよ。しかしまったく人には薦められない映画です。麻薬、ホモ、殺し、何でもあります。目玉くりぬきもね。
まあはじめに歌舞伎町で中国人がらみの殺人事件が起こります。これが首を切られて死んでいるのです。まあ最近見る映画で首を切るシーンが多いこと。何か異常です。しかしこの映画ですでに9年前の作品なんですよ。この監督の作品を見るときいつも思うんですが、この監督は横浜の映画学校出身なので慣れているのでしょうが、これだけ中国人と日常的に接する町は日本でも少ないと思うのですが、日本の田舎とかでもこういう映画は受け入れられるんでしょうか?やはり旅行していて感じるのですが、外国人とかが少ない町の方が多いですよ。ましてや犯罪が絡む外国人がうちの近くには多いので、なんともなく見ることができるのですけどね。
それを追う刑事A(椎名)、逃げる謎のがきBの関係がまあ中心かも、という程度です。しかしまあ、タイトルが出るまでがすごければタイトルが出るところもすごい。女を椅子で叩きのめしますもん。こういう映画良く作れるなあ。この刑事が暴力団とつるんでいる。というか金を受け取っている。そして中国残留孤児で中国人に育てられたのです。よって両親は中国人。そして弟がいて弁護士。映画ではグレて兄貴に反発します。この辺のセンスは私は大嫌いなので観ていながら、兄弟協力しろよ、と心の中でいつも叫んでます。
さあ、簡単な流れ。日本の暴力団がいます。そして台湾から流れてきたチャイナ・マフィアというか愚連隊がいます。彼らは故郷に病院を作って臓器売買をしてます。そして刑事が中国系なのでわかりにくいと思いますけど、チャイナ・マフィアも王道とこの愚連隊とに別れること、さらに日本の暴力団もいくつか絡んでいることを除けば簡単なストーリーです。なんとなく中華街を浮かべると簡単にわかるんですけど。笑い。この暴力団から金もらっているからAは愚連隊を掃除したいという気持ちと弟をこいつらから放したいという気持ちで意地の捜査をします。
Aは台湾に不法滞在者の強制送還のために向かいますが、これは映画として面白くするためでしょう。まあ上司の情けで言外に調べてこいという事はあるんですが。そして実際に行くと周りの村は疲弊して薬物中毒患者ばかりです。それで子供の臓器を売ってしまうというモラルハザードが起こるのです。結構この監督このころは問題提起が多くて、この映画だけでも生体間臓器移植、中国残留孤児と天皇の戦争責任(Aと弟の名前、天皇の名前に近い)などをちらつかせております。答えは出さないところがずるいけどね。
映画に戻りますが愚連隊(映画では王一味)とAにかね出していた日本の暴力団の取引が成立してAはいらなくなってしまった。
あとはピンチも切り抜け、弟を両親の元に返し、愚連隊の大将を殺して終わり。この映画は上で書いた複雑な組織の関係は意外と単純なままに終わりました。日本の暴力団とチャイニーズしか出てこなかったですね。
そしてAもいつかは殺されてしまう。このように一作目は気持ちが入り込みすぎていて実にまとまりが良いです。しかし決してひとに薦めません。