「スカーレット・ディーバ」アーシア・アルジェント監督 2000年
この監督の父親の作品集を買ったついでに、先に観ることにしました。というより夜観るのに父親の作品は怖いから、こっちにしたというのが正論。
しかし、男女構わず、抱いたり抱かれたり、自分自身がするのを監督するというのはさすがに何か精神的に行き詰った感じでしょうか、とにかく裸の自分というのを見つめなおしている節もある映画です。あと映像が、かなり安いカメラ使っているので素人みたいな仕上がりですが、これはこの手の映画では成功していると思います。
自分がスターという設定もなかなか出来ないですが、その日常の普通性と異常性を交互にクローズアップすることで女としての一個人を感じさせてくれるような感じもする映画でした。孤独感と飢餓感が主人公を覆いつくしているのはわかるんですが、俳優としての欲望を監督として実現したのか、かなり自分自身もハードな演技をするとともに出演者にもそのような演技を求めます。ある有閑マダムの愛欲の世界という感じ。余裕があるから出来ることです。そしてその果てに精神的に崩れていくさまはなかなか観ていて迫力あります。この崩れ方は女性特有なので、よくわからないのですが、女には女の悩みがあるんですよ、きっと。
そして映画は途中でストーリーが破綻しますけど、これはこの映画を製作するときに思いついたアイデアでしょう。その製作の苦労が映画に挿入されてます。映画って儲けようとして作ると違った作品になるでしょうし、結果は予測できないものでしょう。かなり博打的な道楽商売だと思いますけどね。
最後には恋人にも裏切られて、どうしようもないときに、信仰心が芽生えて終わり。そのマリアの姿を自分自身に似せて作り、さらに王子(イエス)が光り輝く中登場して終わるのです。これは暗示に過ぎないのですが、まあ終わり方はいいですね。もう孤独を克服したのですから。
ちょっと「17歳のカルテ」みたいな部分もある内容でした。普通は観ないと思いますが偏見を持つほどひどい内容ではありません。こういうときジャケット、ポスターがいけないと思います。
「スカーフェイス」ブライアン・デ・パルマ監督
これロードショーで見た人いますかね?結構リアルタイムの出来事でした。ですから冒頭のキューバからの避難民の映像の迫力、カーター大統領の演説など思い出すことができます。
非難キャンプでまず、殺しを引き受けます。そしてアメリカ国籍をとると(こんな形の国籍の大判振る舞い、もうないでしょうね)バイトをカフェで始めます。そこで見ているギャングに近づこうとします。その前にチンピラとの仕事をして実績を積みます。犯罪ですよ。この映画は当時は暴力描写がすごいということでしたが、今見るとたいしたことはないというか、今の映画はもっと切れるのが早いです。実際の人間も切れちゃうんで、時代を反映しているんでしょう。しかしこの映画の主人公Aは精神的に切れるのが早いです。何かに対しての飢餓が常にあります。それは出生から備わっているべき母親の愛情と安定した生活でしょう。これは後天的にどんなにもがいても手にできないのです。実際に母親や妹に会いに行っても母からは冷たくあしらわれ、妹は悪の道に少し足を突っ込んでしまいます。このことに対してはAは妹を守りたくて注意するのですがAが母の注意を聞かないのと同じで言うことを聞きません。
まあお近づきの仕事が罠だったんですが、切り刻まれるシーンとか出てこないですもんね。今の映画とか平気で出てきます。またちょっと矛盾があるんですが映画は楽しければ良いでしょう。はじめですから、成果はピンはねもしなくまじめに収めなければなりません。
そのボスの女に惹かれてしまいます。そしてますます、金=成功しなければならないと上昇志向が強まります。しかしAはチンピラですので、儲けるといっても仕事が限られるのです。
ボリビア、ゴチャバンバでコカインを栽培している組織と取引を始めるという使いに出されます。上司と行くのですが向こうのボスと商談をしているのはAです。そしてAの態度と度胸、知識を信頼して、その上司をアメリカのボスのところに送るといってAと切り離してその上司を殺します。ここからボリビアとAのパイプができ飛躍的にAは伸びます。
ここで重要なのは、相手は目を見ている、そして知識は会話のいたるところで本質を突いて出てくる、さらにやばい仕事に耐えられるだけの度胸があるかをすべてチェックされているのです。私たちも人を見たら、大体信用できる人かどうかはわかりますよね。それと同じです。その人の本質は隠しても隠し切れないものです。そして信用されるんですが自分のボスに話しても信用されません。大きな仕事をしようと子分が言っているのにねえ。その程度の人物なんです。そしてだんだんAはボスから離れて自分で仕事をするようになります。当然ボスは面白くない。しかしボスは気が小さいので、大きい仕事はできないので嫉妬するんですよ。そして暗殺を計画。これに失敗してすべてを失います。
The World Is Yours、まさに天下が来ます。なにやってもうまくいく。信頼関係で結ばれているので強い。裏切るものはいません。理想の女も手にしたし、妹にも良い思いさせた。これらが最終的に裏切るのです。感情的に自己統制ができなくなるという形で。