しかしトリックスターが登場して俄然面白くなるのです。ロックンローラーが入ってきます。それを高卒程度に教育しているのですが、ひょんなことから犯人と同じ監獄にいたときにやった犯罪がAの無実を証明するというものでした。この告白というか説明のシーンは熱くなりましたね。体をこみ上げてくるものがありました。しかしその彼が殺されたときは呆然としてしまいました。タバコが落ちた瞬間、仲間が見てくれていたと思った私は甘かった。あいた口がしばらく閉まらなかった。
そして脱獄した瞬間、なんか観ているこちらまで開放感がみなぎります。その後の仕返し。
そして友人の仮釈放。そのときのせりふ「罪を犯したときから、後悔しない日はない。更正なんて言葉は作られた言葉である」いいせりふです。
仮釈放のあと、約束の地に行った時の手紙の内容は秀逸、元気であるといいが、と書いてあるけど、元気でなくてもこんな手紙読んだら元気が出てしまう内容です。
あとは仮釈放が決定してからみんなが思っているシーンに向かうだけです。「ザ・プレイヤー」とこの映画とこの頃いい感じでしたね。「ザ・プレイヤー」は大好きな映画です。
「ジョン・レノンの僕の戦争」 リチャード・レスター監督 1967年 イギリス
この原題は「How I Won The War」です。何でジョンレノンがついているのかわかりません。まあジョンのファンを取り込まなければ興行が危ないと読んだのでしょう。正解です。1945年ドイツのライン川まで攻めあがった英国部隊の話です。中尉の回想録(中尉をA)という形で進行します。1939年に軍隊を志願して士官候補になるところから始まります。最近この戦争関係かなり見ているので、こういうときは一気に見たほうが良いのです。
Aの書記がジョンレノン(B)。
まあまったく、映像として流れる話には興味がなく、いいかげんで、自分のことでもほかのことでも考えてみていたのですが、それでも英国は勝ったんです。それと同じようなことを若干皮肉を込めて描いていると思うのです。ホモ、不倫、女などの話をしながら自分たちは大丈夫と思っていると大丈夫なわけはないんですが、相手も同じような人間なので義があるほうが勝ったのでしょう。そんな内容が全編に流れるだけです。このことは「人間の条件」もかなり割いて描いていたので(軍隊の矛盾ですが)まあ風刺なんだろうなと冷めてみておりました。北アフリカのシーンは「アラビアのロレンス」のパロディです。あと「戦場にかかる橋」のパロディも出てくるんですが、この映画事態がパロディで実際に映画の中でも冗句をしょっちゅう言っているんですが、私にするとまったく受けないものでした。基本的には事実というより、冗句の利いた反戦メッセージと考えたほうがいいです。簡単な話、戦争に向かない連中が戦場で関係ないことばかりやっていること自体がパロディでそれでも勝ってしまった事が最大のジョークです。出てくる人たちがみんな平和を愛しているのですが戦争しているのもジョークでしょう。
最後にジョン・レノンはほとんど出ないと思っていて間違いないですよ。
「昭和枯れすすき」野村芳太郎監督 1975年
この映画知っていると聞くと、大体馬鹿にされます。しかしね、いい映画なんですよ。
まずは青森から上京してきた兄と妹(ABとします)Aは刑事、Bは学生。父親が出稼ぎに行っていたときに母親は男と夜逃げをして、お金だけは父親が仕送りしていたけど、結局は工事現場で死んでしまった、二人だけの身寄りの兄弟です。
この映画はふんだんに使われる30年前のロケが利いてます。そのくらい景色は変わるので風景も主役のひとつです。たとえば、三井銀行があります。映画館で「燃えよドラゴン」「ゴットファーザー」がかかってます。
Bの外泊の後、Aは町で家出してきた女をたぶらかそうとしている男を尋問して女を交番に連れてくるのですが、そこでBが男と歩いているのを見ます。そういえば家出って多かったんですよね。私はこの世代も信用していないんですが(団塊の世代、今の50歳代)この映画でもいい加減な感じが出てます。秋吉久美子のほうですけど。日本人は70以上でなければ信用できません。教育が違うんですよ。教育勅語を叩き込まれた世代が私は好きですね。全共闘世代は論外です。まあ世代における私の単なる好みですが。
Bは学校も辞めてチンピラと付き合っています。それが映画館で隣に座って手を握ったらついてきたという関係らしい。チンピラには風俗嬢の女がいます。
Bは別れたはずの男と付き合っていたところ、ホテルに入るのを見られて、Aがその部屋に押し入ります。まあ刑事だからできる無作法ですし、知らなければ、Bも良い妹の振りができたのですが知られたら関係がこじれます。
Bが殺人の容疑がかかります。それはチンピラが殺されたからですけど、まあ映画を見ていれば、風俗の愛人が殺して罪を着せようとしたというのはなんとなくわかると思いますけどね。
しかし妹を疑ってからのAの行動せりふのテンションの高さはすごいものがあります。これって、愛情をかけすぎた待ち続ける自分がかわいそうと思う「岸壁の母シンドローム」に近いものがあるような気がします。異常な環境でしたからなんともないのでしょうがAは深い愛情でBを見ていたんです。そして逮捕したときのシーンはかなりまともな判断で良いシーンです。