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水戸からやくざ志願で新宿に。深作監督も水戸の方ですしねえ。ちょうど戦争中です。ここで深作監督について、たしか麻布中学かなで同級生だった人が知り合いでいたのですが、本当にどうやって人を楽しませるか、ということばかり考えていた若者だったみたいです。

しかしタイトルバックの戦後の闇市は実写ですかね。はい、違いますけど、勢いのある映像です。最近戦争関係の映画よく見ますがこの風景を見ると日本が戦後すぐに変わったことがわかりますし、戦争の強さがまるっきりなくなっていますね。それでいいのだと思います。三国人の描写もそうです。あえて、この言葉が何を意味するのかは明言しませんが、わかる人にはわかります。横浜という場所もわかりやすい場所かもしれません。いまだにわかりやすいかも。笑い。おっと笑っちゃいけません。しかし久しぶりにこの監督のコアな映画見ると三池監督に似てますね。それがおかしくて笑ってみてました。

しかし公認の脱獄には笑いました。おかしい映画だな。でも雰囲気はわかるんですよ。

渡哲也ふんするチンピラの不始末で池袋と新宿が和解できなくなって全面戦争になるなんて素敵ですね。暴力は敵なんですが、チンピラでも面倒を最後まで見るという仁義は気に入ってます。しかしね、このチンピラ不完全燃焼なんです。もっとぶっ潰したいやつらがいるんですが、政治的にこの世界も解決するので、何か気に入らないところがあって親分を酒の勢いで切ってしまいます。自首するのですがやくざ社会では生きていけません。関東ところ払いが各組に回ってしまってます。そのところ払いの禁を破って東京に戻ってきた男をかばった少年院時代の仲間をも切りつけます。すでに薬中毒になってしまっていて、体も破滅に近いんですが。かといって一世一代の勝負に出ているわけでもないんです。何かが気に入らないんですね。私もこれが何かわからないんです。

まあ結局、次の日にも仲間の組に殴り込みをかけたので警察と破門になった組、殴り込みをかけた友人の組すべてに追われる立場になりました。もう彼には刑務所もないんです。

しかし彼は逃げもせずにしゃしゃあと破門になった組や仲間を殺してしまった組へ出向いていきます。この意味がわからない。そしてやはり追っ手が来るけど、たまたま死ななかった。そして自分で死んでいくのですが、彼の行動の源、考え方がわからない、まったく理解不能な映画でなにかしっくり来ないものでした。しかし、なにか実際の人物らしいんです。こんなわからない人物は実在するでしょう。なぜならドラマツルギーではこんな人物作りえないからです。あの三菱銀行の猟銃殺人強盗犯人とかもまったく想像を超えた存在でした。人間とは不思議であり、この主人公なりの仁義があったのでしょう。多分、常に死と隣り合わせにいなければ気がすまない、というより渡世とはそのくらい体を張ったものではなければならないものだと思っていたのではないでしょうか。しかし彼には才覚がないから事を起こせない、できることは一人で暴力を振るうことだけです。そこに彼の存在意義を見つけていたのかもしれません。

この映画は、あまり面白くはない。

 

「サンタ・サングレ」 アレハンドロ・ホドロフスキー監督 1989年 たぶんメキシコ映画

上で比較といってみたのですが、勘違いでした。テーマは同じですが、その作りと独創性規模がまったく違います。こちらの方が数段上です。しかし何回見てもすごい映像です。この作品は音楽もすごくいいのでたまらない映像を見る、独自の世界観を感じる快感があります。また、笑えるくらいに今まで見た映画の比較のシーンが出てきます。

スタートは「バーディ」のように病院の独房に裸で鳥のごとく止まって引きこもっている男が映し出されます。そこに「鷹」の映像がダブります。まさに鳥のマネは鷹のマネだったのですね。(映画の始めに「鷹」が写るのは昨日見た「アマチュア」もそうです。力と権力の象徴でスモンね、たぶん何かそのようなことがでてくるのでしょう)そしてメヒコ(メキシコシティ、好きな街なので、どこだとは映画の中では出てきませんが、わかります)の俯瞰。ここで流れるマンボ最高に良いんです。さらにはミクロ(ズームイン)に迫ってサーカスの広場に場面が変わります。そのなかでこびとと紳士的なマジシャンの格好をした子供が象に乗って通過するシーンに。この二人は実は親友なんです。(こびと、といえば、またまた「アマチュア」で工場作業員を撮影したその対象人物もこびと、でした。何でこんなに見たばかりの映画とダブるんでしょうか、縁ですねえ)二人して新しく入った女の子が綱渡りの練習をしているところを見に行くのですが、ここで子供同士一目惚れをするんです。教えているのが全身刺青の女で子供の父親と出来ているんです。この刺青クモの巣女がガウンをぱっと取ったところなんか良いですねえ。そして父親がこの女を的にナイフ投げをするんです。これがもう最高で、本当に見世物になってます。(ルコントの「橋の上の娘」なんて目じゃないというところ、本当に気持ち良いです。)女はナイフが近くに飛んで来るたびに快感にしびれる様子、何もいえません。エクスタシーとはこういうことを言うのでしょう。その近くでは子供と少女が手話で話をしてます。そして励ますと少女は綱渡りができるようになるのです(愛情が伝わったのでしょうか)。綱渡りをしている最中に少年が音楽のエールを送るのですが、この情感もいいし贈る音楽もいいです。確かに今まで述べた役者は見た目がそんなによくはないので好き嫌いはあると思いますが、映画の流れは本当に最高です。こういうのがいいねえ、という感じです。最後まで良いんですよ、この映画。

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