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Eも「愛は憎しみより強い」と憎悪の念を消すように言います。AEはうまくカップルになれましたね。待つということも大事です。母と妹はずっと牢屋の中で「業病」にかかって牢を追い出されます。そして実家に帰ってきて再会しないで病人の隔離された谷に向かいます。親子の情が深い良いシーンです。

そして族長が仲介で競馬が行われオッズはABで4対1、うまく乗せられて大金も賭けさせられます。ほかのものは誰もこの賭けに乗りません。相手はローマの中心で戦ったヒーローですからね。まあ勝利します。しかし死に際に、またBはくだらないことを言ってしまう。そういう性格なのでしょう。「母と妹は業病の谷にいる」と。

そして祖国のために立ち上がることにします。このことはローマの長官の養子の座も捨ててしまうことになるのです。安住はしない、戦い続ける決心をしたということ。ちょうどキリストも力を持ちつつ(教えが広がる)ある状態で、ローマの統治に変更の兆しが出ております。そのことはキリストの裁判にも出てきます。ちょうど母と妹をキリストに会わせたいと、Eが言うので連れて行くと裁判の最中でした。そこでAはガレー船に行く途中に水をくれた人を知るのです。そしてキリストが死ぬ間際「父よ、彼らを許したまえ」という言葉を聴いてAは「憎しみも拭い去られた」状態になり、母と妹は病気が治り、お互いに良い状態で再会します。すべてはキリストが罪をかぶって、愛を与えてくださったのです。最後は実は意外と忘れておりました。

「ボーイズ・オン・ザ・サイド」ハーバート・ロス監督  1995年

この映画良いんですよ。レズの映画ですが、面白いんです。

はじめにNYで売れなくて疲れた黒人女性歌手(A、ウィーピー。ゴールドバーグ、良いんですよ)気分一新旅に出るんです。そのとき、パートナー募集の広告見つけます。ロスへ行ってみようと思うのです。この募集した女が(B、メアリー=ルイーズ・パーカー)で不動産業がうまくいかないで、「思い切って変化しようと」出かけるのです。似たもの同士です。しかし彼女はエイズでした。「信じれば夢は実現するものよ」これは良い言葉です。

スタート。まずはAのピッツバーグの友人のところによります(C,ドリュー・バルモア、なんていったってこの映画でファンになりました)。

その前に一泊したとき一緒に「追憶」観たのですがBは感動、Aはしらけてます。そんな感性の違い、あと、違いは白人と黒人です。Cも恋人と喧嘩中で一緒にいくことになりました。一応、麻薬を売って貯めたお金を半分持って行きます。しかしそのお金のことでもめていたので最後にはバットで殴って出て行きます。仲裁に入ったBはAから見直されます。何で一緒に生活していたのとAが聞きますが、Cは問題は麻薬のことだけと答えます。レズのAにはわからないんでしょう。結局Cは戻るというのですが、死んでいると知って逆に殴っただけに戻れなくなります。そしてCは妊娠していると告白します。Aはレズ、Bは男に振られているので、何人も男を掛け持ちする女の気持ちがわかりません。

まあ珍道中ですよ。AがレズだとBは途中で知りますし、BがエイズとAは途中で知ります。気楽なようで隠している部分あるんですね。それをAは「罪深き省略」といいます。なんてやさしい言葉でしょう。そして私の好きなニューメキシコからアリゾナに入って、インディオの部落で写真を撮っているとBは遠い昔家族で来たことを思い出します。死が近いといろいろな思い出が蘇ってくるのですね。ツーソンです。ここでBの病気のこともあるししばらく滞在することになりました。そこでAもBも音楽できるし好きなのでライブバーで働くことにしました。そうこうしているうちにBを気に入る男が現われます。Cは相変わらず男ばかり作ってます。おなか大きくなってきてますよ。しかしここで3人とも人間性を取り戻した感じが出てきます。友人というのはこんなにも素晴らしいものなのですね。

そしてとうとうBと性交渉を望みます。しかしエイズであると告白するとその男はAから聞いていた、というのです。BはAのおせっかいがたまりません。(私なら、こういうおせっかいは大歓迎ですが)Aを家から追い出します。まあCは相変わらず、男といちゃついて今度の彼氏は警官です。このキャラクターが「チャーリーエンジェル」につながったと思います。本当にいいですね。警官ですからCの犯罪について捕まえて、あとにしこりが残らないようにします。正直というのはいいですねえ。「余計なことは話さなくて嘘にはならない」けだし名言です。こうやってCを励まします。今度は母親の番です。Bの母親は「愛と青春の旅立ち」を一緒に見たあと、悩んでいるBに対して「本当の伴侶とは、どんなことが会っても最後まで見放さない人のことよ、望みとは違う人でも」という助言をするのです。最高の言葉です。そしてCの裁判の証言に向かうのです。Aと仲直りして。多分私が思うにこの3人、貧乏ですよ。どんどんお金使いますもん。しかしいいお金の使い方ですよね。友人のための裁判の証言にすぐに向かうとかねえ。設定がエイズ、黒人、レズ、犯罪、淫乱とどうしようもないのは映画だからでしょう。生まれた子供は黒人の子供でした。そして出所してあのホームに戻ってきたら、3人が揃います。「愛はお金で買えない」。3人がみんな愛を見つけた出会いでしたね。

11/24

「ホフマン物語」(The tales of Hoffmann) 1951年 マイケル・パウエルとエメリック・プレスバーガーの共同監督

ついでにまず美術衣装担当のハイン・ヘックロートを紹介したいと思います。本当に良い仕事してます。「天国への階段」「赤い靴」「黒水仙」担当もしてます。映画の初めから、踊りながらハンカチに「好きなホフマン」と書いて鍵を渡すシーンなんかさりげないスタートですがきれいなんですよ。そのあとバタフライのバレエシーンがつながり、蓮の花の上を飛ぶように踊るきれいなバレエが続くんですが、もうこれだけでドキドキしますね。そしてオペラも始まるのですが、冒頭のシーンの居酒屋の室内装飾が本当に良いです。なんとうか、酒屋が森で森=居酒屋にすむ妖精たちがおどけるんですよ。きれいで、テクニカラーの色のつけ方も本当に良いですね。絵画を描いているように塗り捲っている感じです。そして酒を飲みながら「3つの恋の物語」=「幻の夢」を見るわけです。夢1。まず始めの夢は「オランピア」です。悲しみを分かち合える女性に出会った、すなわち愛の誕生だと思ったのですが、相手は操り人形でしたって話ですが、人形を人間に見せる「眼鏡」がありそれをホフマンがかけると人形達は舞踏会を開催するんです。ホフマンも参加するんですがこの舞踏会はすべて美しい。もう拍手しかないです。この映画はオペラとバレエの融合と言われますし、英語独特の解釈もあるんですが(劇中の言葉はなぜか、英語)それをまざまざと見せ付けられる感じですね。またシャンゼリゼのモーツァルトといわれたジャック・オッフェンバックの音楽が本当に良いんです。悪いところがまったくないんですよ。オランピアが壊されるシーンは後に「血を吸うカメラ」でマイケル・パウエルが映画界から追放される際にここにもこの監督の怖い一面があると槍玉に上がったシーンですよね。ちなみにこの映画にもモイラは出演してますが、ちょっと面影がないかな(1960年の映画だったと思いますが)。夢2.「ジュリエッタの物語」リュミドラ・チュリーナ扮するジュリエッタが舟歌をバックに登場するシーンの美しさも類まれなるものがあります。もうエメラルド色が似合う女王のような存在感。ため息しか出ません。そして仮面舞踏会。らんちき騒ぎの楽しさ。ジュリエッタの心を宝石で釣ろうとするのですが、ろうそくが溶けて宝石になる発想がきれいです。宝石に意識を取られたジュリエッタがホフマンの影を盗もうとするのですが、それでホフマンに接近していき二人の間のやり取りはすごくロマンテックで、愛のシーンとしては映画の中でもトップレベルの水準です。最高です。しかしねえ、影を盗むのに失敗して、ホフマンに愛されるようになるとゴンドラで消えていくんですよね。ここでも失敗する訳ですよ、ホフマン。夢3.「アントニアの物語」舞台が夢の島です。一方を見るとセザンヌが描いた山のようなものが見え、逆のほうはクレタ島から見た海のような世界が拡がっています。そしてバルコニーにはチェンバロやリュートが置いてあり音楽の世界ですね。話は飛びますがアントニアが母に向かって舞台に向かうシーンのホールの雰囲気、舞台の上での「母」の輝き、すべて美しい芸術です。映画ではないのかもしれません。でもしかし、舞台は実は廃墟だったんですよ。結局は夢で、アントニアは死んでいくのです。死んだアントニアの霊?が踊るバレエのシーンも美しいですし、ホフマンと地平線に向かって続く無限の踊りも夢の世界ですね。さて、居酒屋に戻ると夢をさまようホフマンとは対照的にほかの連中は朝までワインを飲もうと楽しく騒いでおります。ホフマンは絶望して寝てしまっていて、冒頭のバレエのあとの待ち合わせも現実なんですが、すっぽかしてしまうという失態。3つの話はホフマン(作家として現実に存在した人)の「ドン・ジュアン」をベースにしているところもあり、この点で「カサノヴァ」などと重なるんです。そして夢見る映画の中でのホフマンは夢の3人の女性(実は同一人物)にあんなにすてきなハンカチを貰ったにもかかわらず酒場で寝てしまって、それをみられて捨てられていくんですよ。まあ夢の世界であった訳です。観ている私も夢のような時間を過ごしましたし、50年以上も前にこの作品ができているんですね。何故今の映画はこのクオリティを出せないんでしょうか?夢とか美しさ、が映画の中に少なくなりましたが、この映画は本当に美しさに溢れている素晴らしい作品です。

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