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もう、なんでもありというきわめて映画的な映画です。しかしテーマがかなり危ない反社会性があるので書くのをためらいました。まず、舞台となった家が最低な条件で「息子が連続首切り通り魔殺人事件の容疑者で、2、かつ、昔、死刑になった」という環境設定です。そして母親と娘2人の構成で、事件の異様性からマスコミに囲まれて逃げ場がない状況で追い込まれた家族が主役です。結局ここに絡むのが霊媒師一味とその霊媒師を追うFBIと名乗る一味というだけです。霊媒師は商売にしようとたくみにこの一家に取り入り、性的な奴隷と母親と妹を仕立て上げます。そして実際のオカルトっぽい感じで殺された霊を呼んでみようとするのです。しかし、霊を呼ぶのは危険だった。それは死んでから49日たっていなかったからで、やはり、死体が首なしででてくる。霊媒師はそれらを「使い魔」として自分の首を捜しにいかせる。そして霊媒師一味は深く入り込むために、事務担当者を使って奥さんに取り入る。そして深い関係になるのだが、奥さんのほうが病み付きになっていく。その後、妹のほうも深入りしていく。結局、誰も寄り付かない非社会性が完成しているのです。とにかく映画の中で出てくる、この家に出入りする人たちがおかしすぎる。このどうしようもない関係で姉のほうはおかしくなって家を飛び出していくのだが、公園で刑事に捕まり、犯人を知っていると問われると不快感とともに念力で刑事を殺してしまう。そのとき、「使い魔」を手段として使い、念力で殺す。それを霊媒師一味をおかしいと思っていたFBIが事情を姉に話して捜査に協力しろと説得する。すると、あろうことか、「歌を歌いだす。(それは背景が横浜の山下公園から港に見える丘公園に渡って行われます)20世紀ノスタルジアみたいです」この辺で気づくのですがこの映画いろいろな映画のパロディが多いですね。このあとの事件担当の刑事のリアクションがすごく、そのまま、家に殴りこみ、姉を犯そうとするのです。死んだ刑事の仇らしい。どうしようもない展開。そうすると、刑事のほうは殺され、硫酸で溶かされる。(地獄の貴婦人みたいです。)もうなんでもありの展開で、刑事が家に入ったきり出てこないしおかしいと家を取り囲んでいたレポーターは家に飛び込み取材を開始するが、みんな殺されてしまう。この辺で普通の人は見ないと思いますが、この殺し方はフユーリーとかキャリーみたいなものです。そして霊媒師一家とこの家族は5人で出かけるのですが(だいたい、事件の現場がわかってきたから)そこには兄がいるのです。そして殺された女の子の家族も揃っているのです。実は霊媒師と兄が仕組んだもので、実は母親と姉たちが殺して首を切っていたというものでした。この家族の女たちは何かにとり付かれていたのです。そして、霊媒師一家はこの呪われた血が必要とここまで仕組んでいたのです。もうこの辺からさらになんでもありで、この被害者の家族はみんな殺されるのですが、最後に残った姉と兄の間には子供ができているのです。この子供どうなるのでしょう。なにか宇宙に連れ去られたみたいです。どうでもいい、という感じで書いていて嫌になってきました。まあ、何でもあり飛躍性は映画的で画面が笑えるというのは映画ですね。まったくお勧めしませんが、見ていて自分がまともに思えました。そういう効果はあるかもしれません。

「ふたりのロッテ」ヨゼフ・フィルスマイヤー監督 1994年 ドイツ

この映画はいい映画です。内容もよければ、音楽もいいし、風景もいいです。特に前半のスコットランドの景色はなんともいえないくらいきれいです。

映画のはじめは「離婚調停」の罵倒から。離婚から10年後、英語スクールで二つの家庭の子がスコットランドに出かけます。一人はやんちゃな女の子、もう一人はエレガントな女の子。この子たち仲が悪い上に同じ部屋になってしまいます。そこでいじめとしてお風呂に入っているときにシャワーをかけるのですが、格闘になってお互いに濡れてみると、姿がそっくりなんです。そうですね、離婚した夫婦が双子をひとりずつ引き受けて育てているのに、たまたま同じ英語スクールに通わせてしまったのです。子供たちはお互い、少しずつ、打ち解けあい、お互いの片親の話しなんかしながら、ほとんどまだ見ぬ片親を想像してます。そしてお別れのとき、スコットランドの灯台を背景に一緒に記念写真を撮るのですがきれいです。この知らない姉妹同士が触れ合うときの舞台としてスコットランドはとてもいい舞台です。

しかし別れ際に、ある作戦を立てて、別れます。それは別のうちに帰るのです。お互いのばれないために習慣とか教えあって、ママに育てられた子はパパのもとに。逆も。ふたりの名前はママのミドルネームからパパによってつけられているのです。

やんちゃ(A、パパに育てられたほう)は帰って母親の優しさに触れます。エレガント(Bママに育てられたほう)は父のだらしなさにびっくりの連続。行動も変化してます。Aは洗濯機を壊すし、散らかすし、母に「最近短期になったわね」といわれます。Bの方は掃除も洗濯も代わりにやって、ピアノも弾けるようになり、劇場(パパの仕事場)にも喜んでついていくし、「英語セミナーでよい子になったね」と言われます。

そのあと、逆の立場でぜんぜん違うことをやるのは本当に観ていて楽しいです。たとえば、ママの方に行ったAはお見合いを壊すし(そのママの相手の前での下品な食べっぷりは一見の価値あり)パパの方に行ったBはテストで満点を取るし、こんなシーンばかり見ていると世の中捨てたものじゃないと笑い飛ばすことが出来ます。本当に楽しいです。そして両親が気づかないうちにふたりが出会った時のような楽しい考えを取り戻させるのです。二人が愛し合ったときは確実に幸せだったんですからねえ。子供はかすがい、とはよく言ったものです。ママの担当するCMの(仕事が広告代理店勤務)音楽が決まらないのですが、パパの音楽を(劇団つきの作曲家)双子経由で上司に見せ面接のセッティングをするのです。そして作曲家に会いに行って帰ってきたママの前でパパのテープをかけるのです。

するともうさすがにだませません。ここのシーンは感動しますねえ。最高のシーンです。パパと行った子供の名前を呼ぶのです。子供は思わずやっと気づいてくれたと、抱きつくし「わが子」と抱きしめます。両親の再会もセッティングします。しかし大人はそうは行きません。そこでパパが折れて子供をすべてママに預けるというとどちらも個性的ですがかなり立派に成長しているので、ママも自信がないのです。お互いに見直しあい、またうまくやっていくのです。きっと。

となると思ったのです、しかし違いました。双子はスコットランドに逃げてました。夫婦で途方にくれていると、語学学校の先生がたまたま見かけて、電話してくれたのです。そして急遽、スコットランドに向かいました。一緒になるにはもうひとつ試練が必要だったと思ったのですが、違いました。どこにいるのかわからないで、記念写真を見せてここはどこですか、と聞くと灯台でそこに向かうと双子はいました。無事救出でめでたしめでたし。一緒になると思いました。しかし駅でお別れです。双子はママのもとにもらわれました。しかし別れ際に、手紙をパパに双子はあげてました。最後の賭けです。手紙にはパパの口癖の「人生には急停車が必要なときがある」と書いてあったんです。子供にいつも離婚の理由として話していた言葉でした。子供から今度はパパに送られたものでした。ママももう一歩プライドからか言い出せなかったのですが、パパは電車に乗った後その手紙を読んで、文字どうり急停車させて、3人のもとに向かうのです。最後の賭けは無事成功でした。パパのもとに育ったAはたくましい。素晴らしい。原作もいいですが映画も最高です。このような映画は馬鹿にされがちですが、絶対のお勧めです。観てください。最後までいい曲です。

 

「フリークスも人間も」 アレクセイ・バラバノフ監督 1998年 ロシア

 

テニスを再開してかなり疲れたなかで観たので最後まで見ることができるのだろうか?自分自身でも自信なく観たのですが、一気にあいた口がふさがらないまま見終わってしまいました。かなりすごいパワーがある映画です。異常な映画のようですが、それほどではないと思います。

はじめのタイトルバックで流れる音楽は、わかりませんでしたがいい音楽です。この映画の中ではプロコフィエフの「ロメオとジュリエット」の曲とかすごく効果的に使われているので多分、ロシアの作曲家の曲だと思います。ほかにはワルツ調の曲があるのですがこれは本当にいい曲ですよ。この映画のサントラは出ていればかなり買いだと思います。前に書いた「サンタサングレ」も買いですね。あれもすごくいいです。

とにかく映画は尻たたきの瞬間から始まるのでちょっと唖然とします。どういう意味かわからないのですが西洋では尻たたきは何か意味がありそうです。私の知る限り日本で行われているとは聞かないので、なにか違う文化の何かの象徴だと思います。SM的らしいのですがよくわかりません。

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