前ページ

あとここで一兵隊の婚約取り消しの話が出てくるんですが、まさに「静かなる決闘」と同じで戦争による婚約破棄です。良い人材がかなり散っていったのでしょう。「静かなる決闘」とはたまたまでしたが、これほど重なってみると感無量になります。

そして山本長官の死。情報が漏れていたんですね。日本はもう少し情報を重視するべきでした。アメリカは情報戦争に完璧に勝っていたのです。

そして日本は禁断の学徒出陣。実戦経験がないから特攻隊にまわされるんですよね。人間魚雷もそうでした。映像では、たぶん立教だとおもう、大学が映ります。そしてひどい場合は同じ囮の船に兄弟が乗り合わせることもあったのです。空母「瑞鶴」です。囮になって敵をひきつける間に南方で今ある連合艦隊の主力部隊を無事前線に通す役割を担っているのです。この空母の艦長もまた優秀な人材でした。山本長官が出て行くのを止めた男です。しかしです、無線が通じなくてこの囮作戦が失敗したと思ったのです。そして作戦を土壇場で変更。致命的です。

「至誠通天」そして、もう最後。戦艦大和を意味もなく出撃させます。このへんは「戦艦大和」のところで詳しく書きました。「愛する人たちのために戦う。人に愛と犠牲がある限りその民族は滅びない」うーー、まさに「サハラに舞う白い羽根」のテーマそのものです。素晴らしい言葉です。

5/16

「丹下左膳余話百万両の壷」 山中貞夫監督 1935年

欲の張り合いが面白いです。はじめに壷に百万両の在り処が書いてあるというのが胡散臭くないでしょうか?笑い。100万両ということは1両金貨100万枚ですよ。普通じゃ考えられない。あとこの殿様、柳生の守。これも胡散臭いですよね。城がすごい立派です。

この殿様いらないものと持って弟にあげてしまった。ところで取り返しに行くとき「兄上様がお家大事のお宝が」なんて使者のものが言うから弟も返してくれない。壷の名前が「こけ猿の壷」これわざとらしい名前です。はい。弟もこけ猿なんで馬鹿にされたと思ってくずやに売ってしまう。

的や(遊技場)にこのくずやの住んでいる長屋のものが出入りして遊びほうけているのですが、その的やでの弓や遊びの場面で丹下が登場するのですが、そこの女将さんに歌を歌わせようとするまでの音楽の流れはもう映像が踊ってます。素晴らしいですよ。これはよくこの監督が天才だと言われますがそうでもあるのでしょうが、このころまでの日本の遊び場の雰囲気がすごく良かったからではないでしょうか?粋ですよ。弓が曲がっているという、いちゃもんには用心棒の丹下が「やろう」と出てきます。

まあ「壷」については弟も妻にせかされて探しますし、兄貴の方も弟のところにないとわかったら日雇い雇って探してます。

弟の方は前の日に的やの前を通って女将の歌声聞いていたので遊びによってみます。すると女中は歌を聴いていたのを覚えていて、話が弾みます。まあ弟もろくでもないやつですね。

丹下は女将と一緒に長屋の男を捜しに出かけます。こいつは大店の主人と偽ったことを言っているのですが、たまたま件のくずや、に会って道を聞きます。しかしこの男が死んだことを伝えなければならないので行って見ると小さな男の子一人で「こけ猿の壷」で遊んでいるのです。お父さんが死んだとはいえなくて、女将のところで食事をさせていると、丹下の方が子供にまいってここで育ててやることはできないのかと女将に聞きます。それはできないというのですが、件の壷がここにあることがポイント。あの弟も妻に急き立てられ壷を探すと出てはこの的やで休憩ばかりしているのです。そこに小僧として壷の持ち主がお茶を入れたりしております。

冗談だろうけど、望遠鏡で弟の手代がおみくじの方向を探っていると見つけます。そして弟の妻の方を呼び寄せると妻はそこで一緒に魚釣りをしている夫を見つけ職務怠慢を発見してしまいます。そこからはだましあい。弟をくずやが見つかったと案内しますがそこで丹下とこの子供の関係がわかります。しかし妻は遊んでいたとわかり表に出してくれません。

兄貴の方は広告戦で壷をすべて買うという戦略、丹下が売ろうと前金を受け取ってくると子供はめんこがほしいと、金を上げるとそれをめんこにして両替屋の子供から大金を勝ってしまいますし、売ろうとした壷は子供が大事にしていると女将に言われて売るのをやめます。金を返しに行きますがあとをつけられます。

両替屋に子供がお金を返しに行くときこのあとをつけてきた男に大金を盗まれます。問題は親同士というか女将と丹下にもかかってくるわけです。

その問題で女将と丹下が喧嘩していると子供は詫び状を書いて家出します。そんなことをさせてしまったのか、と今度は丹下が博打で勝負します。余裕がないときは負けるでしょう。次の日は道場破り。まずは弟の方が経営している道場に向かいます。すべての門弟は負けます。ここの拳闘のシーンは素晴らしいですよ。役者の基礎が違うという感じがいたします。そして妻に急かされて主人たる弟が。しかし丹下とは的やで知り合いです。影で「負けてくれ、いくらほしい」と「60両」「それはちと高い」「しかしまけられない」というやり取りの末、負けます。丹下も弟の方も面子立ちました。おかしい。百万両の思いやりですね。

しかし男の子は壷を売りに行きます。助けようとしてです。(もう童話ですよね)。しかしぎりぎり間に合います。この辺は活動写真です。そして弟たる道場の主は表立って壷を探しに出かけます。そして丹下に預けておき、見つからないといいながら浮気を続けます。もうこうなると教育の問題ですよ。何でこの時代の日本人が優秀なのか、山中貞夫監督だけでなく、たくさんの優秀な人材が出ております。これは教育以外には考えられないことだと思います。

次ページ