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「王は踊る」ジェラール・コルビオ監督 2000年

カストラートの監督ですね。すべて観ております。この映画は「太陽王」の話で音楽はバロックとたまらない作品です。リュリはほとんど聴いたこともないのですが、ルイ14世といえば絶頂期ですね。イタリアオペラを馬鹿にして、というよりイタリアも初期のバロックオペラですけど、フランスはダンスだと。王はダンスは踊っても歌はうたわないと。楽しい会話です。

音楽と踊りのみを支配する王が映画のはじめのほうで金色の衣装で踊るところは鳥肌が立ちます。素晴らしい光景。こんな王は道楽の世界からしか生まれません。ある面、貴族社会のいいところです。

それから8年後、実権を握っていた宰相がなくなると王自身が親政を振るうと告知します。これで名実ともに王になったのです。反対貴族は踊りを通してその息子たちを友人として囲い込んであります。ということは息子の代になればより強固な政治が実現するのです。実際一番権力があった王ですから。

この国王になったときのダンスもいいです。「エリザベス」といいこの時代の権力者は粋ですよ。日本でもちょっと前の時代は織田信長の能や豊臣秀吉の茶の世界がありました。この時代のバロックのダンスの曲はチェロが低音のリズムのための楽器なので迫力が出るんです。そして勢いでベルサイユ宮殿を造ります。耽美的でもありますね。織田信長の安土城と似ているような気もいたします。

そして国王のためにモリエールの戯曲とリュリの音楽で舞台を作ります。これが映画でも出てくるのですが、贅沢なつくりです。モリエールってこれだけ国王に取り入っていたんですね。知らなかったです。でも考えてみれば、パーセルのオペラの内容のような戯曲がありますね。似たようなものだったんでしょう。とにかく権力者が芸能界の中心にいるので貴族の奥方の受けがいい、そのことは権力基盤が磐石だということです。

しかし教会との対立が残っておりました。一度はモリエールの「タルチョフ」も上演中止にしたくらいなのですが、どうにか教会の保守性は打破したいのでしょう。そこのところを気にかけつつ、唯一の保護者たる母が死にます。ここで保守勢力の台頭はなくなったのでしょう。この葬儀の音楽もレクイエムなのでしょうが荘厳な曲です。

この映画では王の影に常にリュリがいるのです。戦争のときは荘厳な音楽で興奮させ、その勢いで勝つ。性交渉のときは(影で見ているというのもすごいですが)ロマンティックな曲で雰囲気を作るという具合です。

しかしこの映画の宣伝で有名な太陽の神の踊りのとき、うまくいきません。年をとり始めているのです。それを認めて対応すればいいのですが無理をします。完璧を求めるのです。この辺から破綻を始めます。言葉の世界、すなわち芝居劇、オペラに傾注していきます。

リュリはそれが面白くないのです。そのときの花形ソプラノはリュリの妻の姪です。

そしてそれはモリエールとリュリの関係の清算まで及びます。結局リュリもオペラを書くけど唯一、一人の音楽監督として迎えてほしい、友として迎えてほしいと王に頼むのです。これが受け入れられて、変革を起こします。王の賛歌のオペラを作ります、当然姪が中心。内容は王の賛美ばかり。しかし音楽だけが空回りしてしまいます。王は政治をこなさなければなりません。ベルサイユも完成いたしました。これからが正念場です。

といういことでこの映画は主人公はリュリでした。彼の王に対する同性愛的尊敬と自分自身の上昇志向が一生を貫いた人生でした。残されたものは寂しい死だけ。がんばったのにね。

 

映画とすると少し中途半端な感じはしますが、シーンごとに見所は満載の映画です。お勧めです。しかしメイキング観るとがっかりします。全部セット撮影。

7/8

「死んでもいい」石井隆監督 1992年

これは観ておりません。評判は聞いていたんですが、やはり映画から遠ざかっていたときですね。

大月駅の改札出て商店街に出るところで男と女が出会います。男をA女をBとしましょう。出会いは夏ではない時期。夏だと肉体的に余裕ないので、また大月のあたりは暑いのでこんな感じにはなりません。Bは不動産屋の人妻。Aはこの女に一目ぼれ。そして不動産屋で働きたいというのです。まあ積極的ですね。

Aはどうにか仕事をはじめ、順調に不動産屋に入り込みます。そしてあるとき空き物件の中でBを待っていて来たら、そのまま体を奪ってしまうのです。何か、あまりに安易なんですがどうなるのでしょうか?題名からすると見当がつきますが。

そしてABは体がお互いちょうど合うのです。フィット感というかドンぴしゃり会う関係ってありますよね、そのような関係です。Bの役が大竹しのぶさんというところに無理があるのですがまあいいんじゃないでしょうか?田舎娘のイメージありますよね。

そして社員旅行があって旦那が酔っ払って朝までおきないと思い二人でお風呂に入ります。そこを見つかる。というより、普通はそこまではしないでしょう、と思うのですがねえ。

奥さん立場ないですよ、裸で一緒に風呂はいっているの見つかるんですから。私だったらなんて言いますかねえ?

まあ夫は無視するようになってしまいますわ。それとは関係なく「赤い糸」的な出会いはBをして履歴書から元の職場を訪ねさせます。ABの再会。それも女のほうから。やばそう。

Bのせりふはいい言葉が続きますよ。「何で後ろめたいのかなあ」「出会うのが遅いだけでなで一緒になれないのかなあ」とかほとんど良いせりふです。

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