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とにかく舞台の初めのところはうちの近くばかり出てくるので、すごく親しみがあります。地裁や中華街が出てきます。事件も厚木ですし。

「金にならなくてもマスコミが集まる事件をやれ」これが弁護士商法の第一条だとのこと。弁護士がやたらがんばります。ほとんど動いていないんですが、それであてずっぽ言って本当ならそこから新しい糸口が見えてくるという戦術です。もともとAは殺意を認めているのです。ですから刑は軽くなれば成功ならなくて当たり前の事件です。

しかし証人の後ろめたい事実ばかりが裁判で浮かび上がってきます。そして決定的なことは殺された姉が家を飛び出していったのは、母の愛人が手を出してきたことによるという事実がわかってきたのです。母のいい加減な夫婦関係が娘まで変えてしまったのです。そしてホステスに身を落としてそこでチンピラと出会っていくのです。このチンピラがまた人生を狂わせていく。その中で妹とAは埒外の人間だったんですがいつの間にかこの人間関係に巻き込まれていくのです。さらにAは姉と関係していたのを妹に見られてしまったのです。そして姉の妹に対する言葉は「力で奪ってみろ」でした。それから妹は積極的になりAに接近していくのです。

さらに姉はチンピラと縁を切るために逆に手切れ金を払っていたのです。殺された姉はこのようにぼろぼろになっていったのです。そして妹が幸せそうにしているのをうらやましく思ったのでしょう。殺人の瞬間、この姉の顔は「般若」みたいになります。自分だけがいつも不幸、こんな人生は生きられない、そう思ったのでしょう。そして姉が居なくなって周りはうまくまとまったのです。この殺意の証明、出来ないのですよ。

地味だなあ。難しいテーマですよ。しかし神奈川の厚木、平塚あたりですが本当に田舎の風景の感じがしましたね。うーーん、田舎なんだなあ。

6/11

 

「風花(かざばな)」相米慎二監督 2001年

男と女の出会い。酒の席だったので、男は目が覚めてみると忘れてます。しかしなんだかんだ言っても女が故郷の北海道(道東から北見のほうみたい)に帰るのに付き合います。

そして北海道のファーストシーン、喫茶店です。北海道は意外と喫茶店残っているんですよ。まあ大手資本系列のカフェの採算が合いそうなのは札幌くらいでしょう。

偶然、の旅行のようでしたが、女は自分の子供に会いに故郷に帰ってきたのですが、今の商売がホステスということで会わせてもらえません。旦那と何かあったのです。そして男は会社の不祥事を起こしていたのですがそれが大きくなってとりあえず形は任意退職ということになりました。北海道という土地で二人とも宙ぶらりんになったのです。

この二人が風に流されるように、本当に時流にも世間にも流されていく過程を描いたものです。特に女は生まれも家庭環境がよくなく、結婚しても旦那がよくなく(ここははっきりとは描かれていない)風俗嬢にまで身を落とします。それでやけくそで帰った故郷でうえのように仕打ちをされて生きる意味を失っていたのです。生とは偶然なものであるけれど生まれたなら必然となるのです。本当に風に飛ばされた花のように偶然、あるところある両親の元に花を開く、生まれるのです。しかしそんな花もしおれるのは、手入れの問題ですし、環境が大きく左右します。その花が自ら命を絶とうとしたときに、一緒の男は懸命に介護します。こんなに親切にされたのは久しぶりか、または初めてだったでしょう。

これで何か吹っ切れたのでしょう、前向きに生きていく決心が出来ました。そして子供に会いに行きます。当然血のつながりがあるので子供もわかります。この子供と会うなという反対を押し切ってあう自信がなかったのです。それがこの数日の放浪でつかめました。男も何か人を愛するという気持ち、人間代わりはないという気持ちを感じたのでしょう。新しい人生が始まるところで終わります。彼もまた一段と大きくなったのでしょう。

小泉今日子さんのなにかブスな表情がいたるところで見ることが出来る映画でした。ちょっと観念過ぎかな。

6/12

「怪談(かいだん)」小林正樹監督 1965年

これ完全版なんです。一度も見たことはありません。

「黒髪」

主人が没落して職を失った武士が、仕官の道を求めて女を捨てて出かけます。入り婿という形で仕官するのです。当然婿をとるくらいですから、わがままなお嬢ちゃんです。それで昔の彼女が懐かしくてたまらなくなるのです。地方勤務なのです。武士が貴族の守り役のころですから平安だと思います。

そして任期を終えて帰ってみると彼女どころか都(京都)は荒れ果ててます。家に行ってみると荒れた中にも一人機織をしてたたずんでおります。そして「お帰りなさいませ」「悪かった、あの時はおかしかったのだ」と男。「貧乏がさせたのです」と女。そして仲むつまじい抱擁。しかし女は「しばしの間」と男は「ずっと」というのです。そして契りを結ぶのですが朝起きてみると、白骨の死体が。よく見ると白骨なのに黒髪が残っているのです。見覚えのある黒髪です。それを観て恐れおののき、一瞬にしてふけてしまった男にまだまとわり着く黒髪でした。狂うさまは圧巻ですよ。

「雪女」

二人の老若のきこりが山からの帰り道猛吹雪にあいます。笛の音色が吹雪にマッチしております。何かを呼び寄せているのですね。まさに霊(雪女)を呼び寄せる笛です。そして背景の美しさ、抽象性まさに映画的です。雪女は若い方を生かせて「このことを誰にもしゃべっちゃだめだよ」そして「しゃべったらお前を殺す」と言って立ち去ります。

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