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この男も恐怖から立ち直って山仕事に戻るとそこで一人の美人と会います。ひょんなことからこの人の妻になって子供を作ります。すごくいい妻を演じるのです。当然あの雪女ですよ。それで気を許して、昔雪女にあった話しを妻にするのです。そうすると豹変して「私との永遠の約束を破った、さするに殺すのが筋だが子供がいる、大事にせよ」といって消えるのです。残った男は幸せな家庭を一挙に失ってしまいました。雪女が去るときの外の吹雪の景色と地平に見えるぱっくりと開いた目が印象的です。

「耳無し芳一の話」

冒頭の源平の「壇ノ浦の合戦」すごく絵巻物みたいで美しいし迫力がある映像です。そして赤間の供養寺に。赤間神社だと思うのですがその隣にお寺があったかと思います。

ある日、芳一が一人で留守番をしていると、平家の武士が尋ねてきます。そして平家琵琶をある高貴なお方にお聞かせしたいが来てくれるかといわれ、そのままついていきます。何せ目が見えないので何の疑いもなくついていくのです。しかしほかのものの知ることになり後をつけられます。しかし平家の一族は(この一族揃い踏みのシーンはいいなあ)、「壇ノ浦の合戦」のくだりを聞かせてくれというのです。実はこの演奏は安徳天皇の墓前で演奏していたんです。有名なシーンになるには次のようなロジックが必要でした。「死霊にとりつかれたからには死霊に殺される」だから「死霊を避けなければならない」というわけです。しかし、この平家一門の揃い踏みのシーンは素晴らしい。平家琵琶も美しい音色で本当の日本の美が描かれていると思います。おちは耳に般若信教を書き忘れてしまい平家の霊に見られて、もって行かれるということです。それで霊はこなくなりますが、その霊の気持ちというか霊に触れたことで一層平家琵琶の演奏に深みが出ましたし、その体験の哀れさから世間からのお布施は十分もらえたということです。美しすぎる映像です。

どの作品も、日本を代表する役者が揃ってます。本当に日本を代表する映画の一本といって過言ではないでしょう。

「茶碗の中」

回顧的な語り口です。

昔ある武士が茶碗の中に一人の男を見たのですが、実際にその男が屋敷に現れます。この藩のの江戸屋敷は騒然としますが、「音もなく壁に消えた」と聞くと回りのものは相手にしません。まあ男も気休めにゆっくり眠ろうとすると家に来客がある。出てみると先ほど主人が切られたので、養生が必要、それが終わったらこのご無念晴らしにくるというのです。

また気が狂ったようにこの男は刀を振りかざします。しかし殺したはずの3人の武士は何回も何回も現れてきます。

それから、ここで話は切れているとして、この昔のもガタリを解雇している男のモノローグが始まります。しかし本人が消えております。「魂を飲んだものはどうなるのか」と書き残して。

はい、今度は自分が飲まれる番です。

 

アイルランドとギリシャの混血の日本人と日本の名監督の素晴らしい作品だと思います。

6/13

 

「堕ちてゆく人妻 犯された貞淑」 杉山太郎監督 2000年

題名すごいですね。そんなひどい内容ではないんです。しかしここに書くのはためらってしまうような感じです。でも意外と面白いので書きました。

内容は「パリ・テキサス」のパクリです。だから少し共感したんじゃないかな。あの映画好きですから。

まあ三浦半島で喫茶店かレストラン経営している夫婦が中心です。まあいい加減な描写が多いのです。たとえば暇そうな店なのに従業員が多いとか、多いなら料理作っているのかと思えば、妻が弁当作ってきたりするので飲食ではない喫茶店か?とかもう登場人物に個性を与えたいからいい加減になるのがよくわかります。またここのオーナーがいい加減。

飲食店経営してしょっちゅう外食ばかりしている。

税理士に出す資料遅れるなとか、得意先に連絡したか(仕入先ですよ)とかどうでもいいことで妻を怒るのです(税務署なら重要ですが税理士は重要ならすぐに飛んできますよ)。この辺でこのオーナーは嘘、と思うのです。だから馬鹿さ加減が観ていて面白いのでしょう。

映画の中で妻の役者のほうが圧倒的に美人なのに、ブスな愛人を作るオーナー。「お前ね、愛人作る余裕がいまどきの飲食店のオーナーにあるわけないだろう」と私は思う。

妻はじっと夫の不倫を見てみない振りをするのですが、なにか不満があるのです。それは「自分だけを見ていてほしい」という願望があるからです。

しかしこのことに気がつかずに不倫してはお金を浪費する馬鹿な夫。

当然妻は姿をくらまします。夫は愛人からも奥さんのことを聞かれ、奥さんは知っていて黙っているのかもよ、といわれて少し気になっていたのですが、妻の失踪とともに急に妻が恋しくなりました。

いろいろ探しても見つからないし、この馬鹿な夫は今度は真剣に探すために店をしばらく休業するのです。もう唖然というかありえない展開。よっぽど余裕があるんでしょうか?バイトをに休業を伝えるときに「給料の2か月分振り込む」という太っ腹。こいつ本当におかしい。

そんな時妻の友人から電話があって手紙が来たとのこと。消印を観ると「新宿」。そのため新宿にターゲットを絞ります。バイトの知り合いで新宿でバーをやっている人を訪ねるとバーのマスターに「こういうところにきたら、まずは飲み物を注文するのが礼儀」と言われ「質問するより、まずは飲みなさい」と言われます。私はこのマスターの言葉が大変気に入ってます。飲み物を提供しているところで食べ物をかねようというのは無理。何か今の世の中「ランチ、飲み物つき」の変な世界ですのでこういう余裕のあるせりふはすごい好きです。食べ物を食べ物の店に行く、飲み物は飲み物の店に行く、基本です。

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