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そして、この4人がイタリア旅行に行ってしまうので話がわかりにくくなります。この旅行は実はブラックボックスで映画のあとにかなり自由に考えることが出来る余地のある時間となります。私はのちにBをしてAの子供をCが身ごもったのか?というせりふから考えてここでAとCは肉体関係があると思います。ここでもDは一人先に帰ってくるのです。

「病気そのものは治療が出来るが置かれた状況により不治の病になる」ような状態に4人の関係がなっていきます。犯罪に手を出していきます。そんな中、母が死んで葬式。

それと同時期に警察の手入れ。Dはものすごく怒ります。良家に嫁いできたはずなんですから。そこで昔から知り合いで好きあっていたBがDにあまりかかわりを持つなと、忠告に来てくれます。Bはもう覚悟を決めたのでしょう。もしこの家に残ったら君の負けだと教えてくれるのです。まさに人生はルーレットですね。心は優しいのだから、と思うのですがなんとDは「やさしさ」なんて「単なる礼儀の問題」というのです。礼儀を守っていれば傍目にはやさしく見えるといういのです。いやー、パガニーニの音楽がこんなところで効いてくるとは。それはDの本質の恐ろしさを表現した音楽だったのです。

A,B,Cはどんどん落ちていき、心の弱いAは自殺、Bは自首、Cは国外でどうにか生活しています。このAの葬式のときにDはAすなわち自分の夫だったひとがお手伝いの子供だったと知ります。すなわちAとBは兄弟だったのです。それでAはこの家の正当な当主ではなかったのです。それをマリア様の前でお祈りしているお手伝いの姿を見てその告白を聞いてしまったのです。

そして最後の弁護士とのシーンでBについて「女性の奴隷、快楽と豊かさの中にしか居場所を見つけられなかった」といい、Aについて「うそとみせかけと裏切りに囲まれていた」というのです。そして弁護士の求婚に笑って終わるのです。この笑いの恐ろしさはパガニーニの音楽にも負けません。ぞーーとしました。

12/22

 

「リゴレット」 ヴェローナのアレーナでのオペラ祭 演出カルロ・リッツアーニ ビデオ監督ブライアン・ラージ 1981年 イタリア

 

このオペラのよさはなんといってもテーマにもかかわらず曲のよさです。なんとも良い曲ばかり並んでいることでしょうか。もうはじめから素晴らしい。特にマントヴァ公爵邸の「どれもこれも私にとってそこらの女と同じ」から「チェブラーノ殿よ、まさかお怒り?」まで一気に、管弦のリズムと抑揚が本当に素晴らしい。はじめから釘付けになりますね。内容は破廉恥さわぎとせむし男が出てくるとはまったく思えないメロディです。まずはリゴレットがよいです。(バリトン、ガルビス・ボヤージアン)。

リゴレットのいじめ依頼(これが後に亡霊さわぎとなります)や秘密がでてきて、そこにジルダ登場です。ここも本当に劇的に盛り上げながらもスムーズに登場します。そして親子の二重唱良いです。(ソプラノ、ジルダ役アリーダ・フェッラーニ)。リゴレットが「故郷も身よりもない」「ジルダだけが生きがいなんていっているので孤独なので異常なまでの愛情を娘に注いでいることがわかります。しかし世間から遠ざかって生きているのですね。リゴレットが退場してからの「ジルダの秘めた恋」がわかり(一目ぼれですね)「愛こそ心の輝き」の二重唱もいいです。まさにお互い一目ぼれの強い愛情が表現されます。この曲の中で「二人は愛し合っている」というフレーズも良いですねえ。ジルダの楽しそうな顔も印象的です。愛についてとくとくと語って歌い上げます。「私を愛すると」「言いました」とこのときにリゴレットが戻ってきそうなときのスリリングな音楽と「さようなら私の希望よ星よ」も良いですねえ。恋人が去ったあとのジルダの独唱「グァルティエル・マルデ・・愛する方の名」このアリアはばっちり決まってます。初恋のときめきがうまく歌い上げられていいですねえ。最後にリゴレットが目隠しをされてだまされて伯爵夫人を誘惑しろと言われている間にジルダの身に何か起こって第一幕終わります。話はすごく暗いのですが、本当に何でこんなに美しい曲なのでしょう。すべてが美しいです。話の内容はどうでも良いくらい本当に美しい第一幕で

す。

第2幕

第一幕の終わりのジルダのアリアに対応するかのように公爵の「誰が奪ったのか」「わが目に浮かぶはあのひとの涙」がいいですね。マルデが偽名でこの名を知っているのが愛の証しと歌い上げます。二人しか知らない名前ですね。

道化の勝負はどうしたのだと大衆(合唱)内容知らないで待っていたほうが良いというのですが、リゴレットがジルダが連れ去られたことに気づきます。公爵もジルダが間違って連れ去られたと思い、部屋に向かいます。ジルダを追ったリゴレットは笑われるだけですが、しかしリゴレットは「側近ども、いいや悪魔」を歌い上げます。(ジルダを守るぞと)バリトンの妙味に尽きる歌ですね。ブラボー。

ジルダはやってきてみんなにお披露目、しかし何か言いたそうなのでみんなを去らせて話を聞くと辱めを受けたといいます。そして、好きな人がいると、「日曜教会で祈るたびにある若い方と運命の出会いが」と歌い上げます。秀逸な歌で、このオペラの陽の部分を構成します。本当に愛の歌もいいオペラです。「恥辱はおれだけにと願ったはずだが」と親子一緒に歌う二重唱も最高の出来で、リゴレットの運命が決定します。敵討ちですね。ジルダは心配するのですが「そう、見てろやがてこの手でかならず敵討ちを」と第2幕は壮大に幕を閉じますが、再三言ってますが音楽聴いているだけなら、壮大なオペラだと思うでしょう。単にせむしとその娘の恋愛、恥辱仕返しと因果応報の亡霊さわぎだけなんですがヴェルディは何でこんな良い音楽をつけたのでしょう。本当に良いです。「椿姫」も娼婦ですし、そのような社会的に日の当たらない人の人生を描いたオペラの一環ですね。みんな最高の出来というのも皮肉でしょうか。

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