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第三幕

女好きの公爵が出てきます。それも「風にゆらぐ羽のように女心は気分しだい」を歌います。この歌は白眉ですね。第三幕はここと亡霊のみでしょう。

そして娼婦といちゃつくところをジルダとリゴレットは見てしまいます。しかし、本当はジルダに対するほてった気持ちをさませたいという気持ちからです。リゴレットは仕返しするつもりでジルダに家に帰って馬と金を持ってヴェローナに行けと言います。そして殺し屋を雇いますが、殺し屋はリゴレットも殺してすべてのお金を奪おうとします。

それをジルダは聞いていて、好きな公爵の身代わりになろうとします。それで代わりに殺し屋に殺されます。リゴレットは後金を持って死体を交換に受け取り、川に捨てようと思います。しかし、「女心の歌」が遠くから聞こえてくるではないですか?ではこの死体は?顔を見てしまいます。すると娘です。悲観にくれて、先ほど、第一幕ででてきたリゴレットが伯爵と一緒にいじめた、一人の伯爵が死んでも亡霊になってやるといったことを思い出して、亡霊か、と因果応報で自分に罪が回ってきたと嘆くのです。しかし本当に良いオペラです。しかし最近すごく有名な割に中心人物がテノール、ソプラノではないカルメンといい(メゾソプラノ)、このオペラといい(バリトン)意外と上演されるケースが少ないオペラばかり見ています。

12/22

 

「六月の蛇」 塚本晋也監督 2002年

 

久しぶりに見ました。劇場で見てから半年くらいでしょうか、また印象が変わりました。

この映画を見たあとに、塚本監督のほかの作品を見たせいか、すごく異質の作品に思えるようになりました。やはり「鉄男」が一番です。

基本的に塚本監督は三池監督とともに好きな監督です。

この映画は夫婦の性を扱った映画で、たしか監督が上映時「中年のおじさんが元気が出るように作った」と言っていた記憶があります。そうなのか、よくわからないですが夫のほうがちょっとおかしいんじゃない、という人間ですのでゆがんだ夫婦関係になるのでしょう。

 

妻のほうは「心の健康相談室」のカウンセラーをしてまして、かなり常識的に判断できる人間です。しかし、誰にでもある性的欲求は当然持っているんですね。しかし夫のほうが潔癖症でうまくいかないんです。夫は掃除が好きな潔癖症で、お金持ちと男として無視さえすれば、先日のオリヴェリラ監督の「家宝」の主人公からするとこの上ない結婚相手なんです。しかし塚本監督は違うというのですね。夫婦の健全な性生活が普通だと言うのです。これは最後に実現します。

そのきっかけは妻のほうがカウンセラーで心を救ってあげたカメラマンなんですね。まったく手も出さないし、最後にがんで死んでいくのでお返しのボランティアだったんです。ちょっと過激ですが。

妻のみだらな状態の写真を撮って送りつけて、ネガが返してほしければ、言ったことをしろ、と迫ります。「いつも言っているように心の中の願望は果たさなくても良いのか」という問いかけが効くのです。実際命令どおりに、妻にミニスカートをノーパンではいて街を歩いてバイブレーターをさしたままさらに歩かせるのです。そして妻のほうの欲望を深くさせるのです。これで本当は終わりのはずでしたが、妻にその写真を撮って脅した写真家が「病院に行ってくれ」といいます。実際に病院に行くと「乳がん」でした。もう片方の乳房を取らなければ転移してしまいます。夫は完璧主義ですので、妻の乳房がなくなることも嫌がります。そして妻はとらなくてもよくなったと、転移覚悟で言います。もうこの時点で写真家も癌で死ぬ一歩前でしたのでこの夫婦に関係なくなりますが、妻のほうが逆に写真家にお願いをして同じ行動をもう一度写真に撮らせるのです。しかしひも付きの依頼で、夫にわかるようにとってくれといい、さらに撮った写真を夫に上げるというのです。夫のほうは妻の行動がおかしいと電話が写真家から入り、疑っていたのですが、実際に尾行すると、ノーパンでミニスカートさらにはバイブレーター入れっぱなしで街を歩き、写真家と約束の場所で欲望のなせるままに乱れます。それを写真で撮ってもらうんですね。尾行してきた夫もそれで欲情して、一人で射精します。これでめでたしめでたし、の夫婦関係になると思ったら大間違い。夫は写真を見て妻の本当に姿を見たいといいます。この夫はどこまでも目の欲求が優先するんですね。その写真を取りに来た夫を写真家はお仕置きをします。写真にあるのが本当の妻の姿なのに、と夫に言い聞かせます。本当に自分が死ぬのがわかっているので人を助けたいのでしょうか?。夫はもう裸にされ、めちゃくちゃなことをされますが、一番効いたのは「妻がわざとみだらな写真を夫に見せたい」ということを写真家が夫に言ったときです。妻の本当に姿とともに自分の本当に奥に隠れた欲望に気づくのです。すごく暴力的な人間でした。そして夫婦の関係がはじめて成立している中、映画は終わります。当然、写真家は死にます。

今回改めてみていて、夫のだらしなさがみょーにイラつきました。この役者も嫌いなタイプなんですが、私が妻なら見限って、お金持ちなので離婚せず、別の人生楽しみますが、塚本監督は夫婦の蘇生で中年の男の勇気付けを行ったのでしょう。

 

12/24

 

「熊座の淡き星影」ルキーノ・ビスコンティ監督 イタリア  1965年

 

もう、素晴らしいの一言です。賞賛するシーン、構成、俳優いくらでも出てきます。

まずはクラウディア・カルディナーレの扮する旧家のお嬢様をAその弟をCその夫をBとします。もうAの視線とその眼光はひとつのテーマです。素晴らしい。この監督はロミー・シュナイダーといいシルバーナ・マンガーノといいなんと美しい撮りかたが出来るのでしょう。もともと美人の俳優ばかりですが、この監督にかかると、もう存在自体が輝けるようになってしまうのです。本当にすごいセンスの持ち主だと思います。

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