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やんちゃ(A、パパに育てられたほう)は帰って母親の優しさに触れます。エレガント(Bママに育てられたほう)は父のだらしなさにびっくりの連続。行動も変化してます。Aは洗濯機を壊すし、散らかすし、母に「最近短期になったわね」といわれます。Bの方は掃除も洗濯も代わりにやって、ピアノも弾けるようになり、劇場(パパの仕事場)にも喜んでついていくし、「英語セミナーでよい子になったね」と言われます。

そのあと、逆の立場でぜんぜん違うことをやるのは本当に観ていて楽しいです。たとえば、ママの方に行ったAはお見合いを壊すし(そのママの相手の前での下品な食べっぷりは一見の価値あり)パパの方に行ったBはテストで満点を取るし、こんなシーンばかり見ていると世の中捨てたものじゃないと笑い飛ばすことが出来ます。本当に楽しいです。そして両親が気づかないうちにふたりが出会った時のような楽しい考えを取り戻させるのです。二人が愛し合ったときは確実に幸せだったんですからねえ。子供はかすがい、とはよく言ったものです。ママの担当するCMの(仕事が広告代理店勤務)音楽が決まらないのですが、パパの音楽を(劇団つきの作曲家)双子経由で上司に見せ面接のセッティングをするのです。そして作曲家に会いに行って帰ってきたママの前でパパのテープをかけるのです。

するともうさすがにだませません。ここのシーンは感動しますねえ。最高のシーンです。パパと行った子供の名前を呼ぶのです。子供は思わずやっと気づいてくれたと、抱きつくし「わが子」と抱きしめます。両親の再会もセッティングします。しかし大人はそうは行きません。そこでパパが折れて子供をすべてママに預けるというとどちらも個性的ですがかなり立派に成長しているので、ママも自信がないのです。お互いに見直しあい、またうまくやっていくのです。きっと。

となると思ったのです、しかし違いました。双子はスコットランドに逃げてました。夫婦で途方にくれていると、語学学校の先生がたまたま見かけて、電話してくれたのです。そして急遽、スコットランドに向かいました。一緒になるにはもうひとつ試練が必要だったと思ったのですが、違いました。どこにいるのかわからないで、記念写真を見せてここはどこですか、と聞くと灯台でそこに向かうと双子はいました。無事救出でめでたしめでたし。一緒になると思いました。しかし駅でお別れです。双子はママのもとにもらわれました。しかし別れ際に、手紙をパパに双子はあげてました。最後の賭けです。手紙にはパパの口癖の「人生には急停車が必要なときがある」と書いてあったんです。子供にいつも離婚の理由として話していた言葉でした。子供から今度はパパに送られたものでした。ママももう一歩プライドからか言い出せなかったのですが、パパは電車に乗った後その手紙を読んで、文字どうり急停車させて、3人のもとに向かうのです。最後の賭けは無事成功でした。パパのもとに育ったAはたくましい。素晴らしい。原作もいいですが映画も最高です。このような映画は馬鹿にされがちですが、絶対のお勧めです。観てください。最後までいい曲です。

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「殺人に関する短いフィルム」クシシュトフ・キェシロフスキ監督 1987年ポーランド

はじめにゴキブリ、ねずみ、猫の死体が出てきます。なんとなく人間がその死に関与している感じの死体です。猫なんか首吊りです。

話は3人の男を中心に進行します。若い男(Aとする)は何もすることがなく不安定な面持ちで街をふらついてます。映画を観ようとしても、時間が合わず見ることが出来ないし、絵描きに話しかけても、何が出来るのか、という質問に答えられません。逆に「木を育てられるか?」という質問を受けるのですが、「出来る」というと少なくても植木職人になることが出来るということを示唆されます。しかしそんな職業に興味ないのでしょう。そのあと、公園では鳩にえさをやる邪魔だとおばあさんにどけと言われます。居場所がないんですよ。歩道橋の欄干にたたづんでいると石が置いてあり、それを下に落としたくなります。下は車が走っているので、危ないのですが、落とすと案の定車にぶつかります。

もうひとりはタクシーの運転手(Bとする)住んでいるアパートの近くで自分のタクシーを洗っております。途中、お客が来るのですが、洗っている最中と断ります。客を選んでいるのか向かうところがあるのかわかりません。

もうひとりは弁護士の試験を受けている男です(Cとします)。彼は大学の後働いて勉強しているうちに、人生経験から弁護士の仕事の重さを認識し始めているのです。ゆえに答えは(口頭試問)深いものです。たとえば、犯罪の抑止には何が有効かという問いに対しては刑罰ではだめ、恐怖を抑止力とする、と答えます。理由はカインの頃から刑罰はひとの犯罪の抑止にならないというのです。この3人が交互に映し出されていくのです。

 

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