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そして「ヴェガ」へ。地球時間で一瞬でしたので、Aにとっては長い時間だったのでしょう。相対性理論ってこれを示唆しているんですかね。実はよく知りません。格言「オッカムのカミソリ」も知りませんでした。最後の尋問のとき「われわれはより大きなもののひとつの変数に過ぎない」というの良いせりふですね。

そして静かにアリゾナの荒野で終わっていきます。宇宙人も仲間で人間は地球は孤独ではない、閉鎖体系ではない、答えも外の変数を使えば見つかるはず、という良いメッセージでした。

2/9

 

「ノボ」 ジャン=ピエール・リモザン監督 2002年 フランス

役者と監督が楽しんでいる映画があると思います。これがそういうタイプの映画ではないでしょうか。うまくいえないんですが、見ていて心洗われるとか考えさせられるとかないのです。日本も最近この手の映画が増えているのですが、役者は楽ですしイメージが崩れないしこういう映画は好きでしょう。監督も作りやすいと思います。しかし観客が楽しくないといけないのです。見ていて、君たち楽しんでいちゃいけないよ、と思います。「ガタカ」もそうなんですが、モデルとかスタイリッシュという言葉を変に勘違いするとこういう映画に仕上がります。「ガダカ」も魅力的なはずなんですがなぜかまた見たいという気にさせられない映画です。この映画はその前の段階、この映画にお金出した人がいたのか、という疑問ですね。しかしつまらないかというとそうでもないんです。多分私が年を取って愚痴っぽくなったんでしょう。さらに最近邦画のいい作品を見ているので、かつ洋画も美人ばかり見ているので、この映画の俳優たちが目立たないということもあります。世間ではこの女優はシャネルのミューズという言い方しますが、??モデルというだけです。男優もそれほど良い男という感じではないです。

記憶がないから新鮮であり続けることはできるけど、記憶がないから感動の積み重ねもできないんですよね。記憶の共有ができないということは意外と深い関係になれないということのような気がします。そんなこと考えてみる映画でもない感じがしますけど。事実女のほうは感情が記憶として積み重ねられないのでいらいらします。それまでは記憶喪失の男と欲望だけで関係が成り立っていたのですが欲望もまた、記憶がその高揚に大きく関係するのです。映画自体はこの欲望について中心的に描かれますが、男が記憶が戻ったとき妻とこの女と3人の関係が本当にスタートするのでしょうか?体は記憶がなくてもこの女のことを覚えているのでしょうか。この記憶喪失、無意識の状態での欲望の深さと男と女の結びつきについて、それはありえるという回答が用意されております。まあ愛と夫婦は作り上げるもの。欲望は人間本来のリビドーと私は思うのですが、そうなると妻のほうが不倫を認めなければ成り立たないのです。ですからそこまではこの映画は描いておりません。その一歩前でとまります。そう欲望の関係が頭でなく肌で直感的に覚えているかという問題提起なのでしょう。面白いと思う人もいるかもしれませんがちょっと軽く作りすぎているな、という感想です。

2/10

「黄泉がえり」塩田明彦監督 2003年

はじめから監督の実力、役者の実力がちょっと足りないのではないか、と思ってしまう。しかし大ヒットした事実は紛れもないので、今はそんな時代だと思うことにしよう。

「思いが人をよみがえらせるのか」という問いに、信じなかった女(A)は自分の彼氏もよみがえったかどうか、確認に同棲していた家に戻ります。当然、蘇っていない。なにか、きっかけや理由があるはずです。厚生労働省の役人(B)でAの幼馴染が調査にやってきます。場所は阿蘇。とりあえず「高砂」の木がある神社がありますね。

しかし面白いサンプルが出てきます。特別、表面的には「誰も生きていてほしい、戻ってきてほしい」と思わなかった人までも蘇ってきました。これでAの願いもまんざら嘘ではないということがわかります。

もうひとつは「夫が死んだ後、その未亡人を好きになって未亡人の経営しているラーメン屋で一生懸命働いている男」の場合。必死さから子供もこの男の人になつくのですが、夫が蘇ってから、この男の人のひそかな恋心は壊されます。さらに夫もいなかった間の子供とこの男の人の関係が良い感じなのを、ビデオで見て知るのです。上の戻ってきてもらいたくないと思っているというケースは、この男の兄貴のケースです。確かにうれしいのでしょうが、あまり願っていたことではなかったのですし、この男は兄貴が戻ってきたことと、好きな人の旦那が戻ってきたことを一緒に考えています。すごく短絡的。馬鹿だなあ、と思ってみているんですが、この辺、言葉がなく音楽、それも管弦中心で映像で語れば、雰囲気は当然一気に盛り上がります。

あとはいじめられて自殺した高校生や子供を自分の命と引き換えに死んでいった母のケースなど、あとから死んだ人が戻りその人たちの存在理由が再確認されるケースが出てきます。

しかしAの彼氏が戻ってこないように、クレーターと重力異常が蘇りに関係するみたいです。さらにお墓の位置があるエリア内の限定されています。Aの彼氏のお墓は海の中。しかしこの彼氏を好きだった女のこのところに戻ってきているのではないかとAは疑ってしまいます。BもAが彼氏のことをそんなに思っていたのか、初めて知ります。これは本当に思っていたのか、思い出を美化しているのか、微妙なんですよ。実はBの方が合うんですけどね。

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