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そして個展に故郷から見に来てくれるんですが都会と勝手が違います。その人に冷たくしても故郷はルーツなんですけどね。そこに戻ることになるところですよ。故郷を切ってBを迎えに行くとそこには上流階級の冷たい仕打ちが待ってます。Aを利用して同じ上流階級同士で結婚させたのです。まあ振られたというか、一人になりましたね。ところがですよ、この小説は。

ディケンズの才能は素晴らしい。振られ傷ついた心をAにBの母から受け継がせるのです。次に愛の復讐に燃えるのはAになるという構図。それまではBの母が裏切られた婚約者による心のトラウマから愛に対する復習を誓っていたのですが、その復習をBが上流社会の中でかっこたっる地位を築くために利用してAを壊すことで達成したのです。

しかし個展の後、わかっていてもAとあの脱走犯の出会いの場面は良いですね。すごく映画、、というのを感じさせてくれます。すごい良いシーンです。内容がわかっているからかもしれませんが、「大いなる」といわれる「遺産」とはなにか?それが伝わってきます。デ・ニーロの話し方も良いですね。そしてお絵かき帳が出てくるときにはもう感動で体がいっぱいになります。本当にあの助けられたことがうれしかったんですね。そして子供の素質を見抜いていた脱獄犯、すごい執念の素晴らしい影響をAに与えていたのです。女と男の異常な執念に翻弄された奇異な人生をすべて知ることとなったAは本当に人間がわかってくるでしょう。孤独の意味がわかるでしょう。素晴らしい経験をしたのです。その後のことはどうでも良いでしょう。うまくいくに決まってます。なぜなら?こんな素晴らしい遺産をもらっているのですから。故郷で良い出会い。そして永遠の愛。初めからわかっていたことですがと遠回りしただけです。

2/17

 

「四月物語」 岩井俊二監督 1998年

この時期になるとこの映画とか篠原監督の「はつ恋」などをどうしても見るのですがまずはこの映画行きましょう。

本当に桜の始まりですね。あの景色は意外とどこにでもあるのでしょうが、すごく旅立ちを考えさせられます。桜=転機なんですね。嫁いでいく花嫁もうまい具合にクロスするし、新入生も通るし、どんな学生生活が待っているのでしょう。いまでは不景気から引越し風景は珍しくないのですが、どんな人が来たのだろうと見ている夫婦がいるのが何かほほえましいですよ。たしか、拓銀、山一、日債銀、三洋証券まとめてつぶれたのこの年でなかったでしたっけ?あのころはどうなるんのかと思いました。しかし今のほうがもっと危ないと思います。政策的に銀行をつぶしに行かないのが今の政府の考えみたいですけど、まあつぶれてもおかしくない所いくらでもありますよね。さらにあの金融政策、かなり頭にきております。話がそれてしまいますが、そんな時期だったんですね。本当に映画が好きな人はこのはじめのシーンでこんなこと考えないでしょうね。私はいろいろと考えてしまった方です。

そしてあいさつ回りに向う三軒両隣りを回るのですが、これも今はしないんですよね。よく近所で、引っ越してきた人挨拶がないケースが増えてきて、「あの人挨拶あった?」と近所の人たちで言い合うのが多くなってます。そして挨拶しない人がマナー守らなかったりするんですよね。この映画ははじめの段階で、どんどん私の気持ちを揺さぶります。感情もですが常識、都会生活の孤独というものをすでに語ってくれているように思えて仕方ないのです。またキャンパスの様子が昔とまったく変わっていなくて、特に北海道から出てきた主人公の女の子(A)は息が詰まるような馴れ馴れしさと、どこか距離がある、深い孤独を無意識に感じていたのではないでしょうか。自転車のシーンがすごく開放的に映ります。しかし映画館にはじめての日曜日に行くか?とも思うのですが見ている映画は多分、この監督のオリジナルの時代劇。大学一年生の女の子が時代劇というのもねえ。さらにこの時代劇、めちゃくちゃな内容でまるで「角川映画」です。

あとは映画なのか現実のこのような女の子がいるのかわからなくなるくらいに等身大の生活を映し出します。でもカレー作ったとき隣が女性だからといって「一緒に食べませんか」は普通はないですね。さすが旭川と思ったなあ。その旭川から「武蔵野」へ、先輩を介して進学するのですが、思いは強いだけに、この思い裏切るような形になってほしくないな、と思ってしまいます。何か親心みたいなものを感じてしまう。

そして「雨」がきっかけでいろいろと思い切って話ができましたね。きっかけというのは必用ですね。Aの場合はきっかけというより、必然です。あれだけ努力しているんですからね。後はうまくいくと良いですけど、大学は長いしねえ。

あまけに劇中映画がついているのですが、見る気にはなれませんでした。意外と良いところで終わったので、もう少しどうなるか見ていたかったのですが、充分です。こういう終わり方はうまいと思いました.

2/18

 

「バチ当たり修道院の最後」ペドロ・アルモドバル監督 1989年 スペイン

また映画で欧州旅行の感があります。

この監督は最近の作風がまったく変わってきており、昔の作品に興味がありました。

まず断っておかなければならないことは、この作品でさえ私は良いと思います。なぜか、下層の困ってもがんばって生きていく人たちを描いているからではないでしょうか。音楽もはじめからゆっくりのテンポにリズムをベースで強く刻むラテン調ですし、場末の女もたくさん見ているので彼女たちの哀れみ(と周りは思うでしょうが、実はすごく元気)もかなりわかっているのですごくわかりやすい映画です。人生とか愛とか悩む前に食べて寝るということですからわかりにくいことはないのです。

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