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しかしこういう展開は映画としてかなりいけない行為だと思うのですが、実はAは乱交パーティーを企画してCをものにしようとしたのでした。しかしCがのってこないでAの友人の美人の女の子(D)ばかり男2人の目が注がれるので頭にきております。そして監禁状態を作ってAは好きな人と一緒に死んでも良いとさえ思っているんです。鍵を閉めたのはAですよ。そしてCと一緒にいられると思ったのです。事実仲良くなりますが、Dは死んでしまい、Cも友人を些細なことで殺してしまいます。そしてふたりだけになったときCからとうとう愛しているという言葉が発せられます。とりあえずこの賭けは勝ったのだと思うのですがなぜこの続きがあるのでしょう。

Cに真実を告白したら嫌われるだけでなくすべてが明るみに出るところでした。しかしアクシデントでCは死にます。確かにCの愛情を勝ち得るためにやったことです。しかし3人が死んでしまいます。Aは直接にはまったく手を出しておりません。唯一、Bを犯人に仕立てるために自殺と見せかけるときに殺します。Aも生きていても仕方ないのですが死なないということはCの面影を抱いたまま生きるのでしょう。後味の悪い、気持ち悪い映画です。まずこんなことは起こらないでしょう。

3/10

 

「人間の條件」小林正樹監督 1961年

第五部     死の脱出

第四部の最後「どんなことをしても生き抜いてうある、俺は鬼だ」というのは何人殺しても俺は生きる道を選ぶということでした。敵の中、味方は数人。ひとりの見張りを殺せば、突き抜けることも可能な状態。結局誰も行きませんし、Aが鬼になるといったくらいですので殺しに行きます。3人はどうにか逃げたもののつかまるのは時間の問題。

ところでこの5部から音がかなり良くなりました。戦後のこの2年間は大きかったのでしょう。あと追記ですが、この映画は俳優がかなり良いです。クレジット見ているだけで凄いと思ってしまう。

逃げる途中に民間人と出会います。その連中も一緒に連れ立つのですが、食料を持っていないので、すぐに食料がなくなります。そこで軍を罵倒するもの、一緒に生きようとする老齢のご夫婦など人間のいろいろな様子が描かれます。ここでもAは試練を与えられるわけです。

そして森の中をさまよい、荒野をさまよい、最後に賭けに出た日の前日に最後の食料をすべて食べて出かけます。ほとんどの人はついてこれない。そしてAも信念が揺らぎ始めます。しかしやっと人の気配が感じられて、ついたところは?

また嫌になるくらい試練が待っております。「なぜ最後の突撃をしなかった」と言われます。「みんな玉砕したはずなのに、なぜ生きている」。

それで切れたA.。相手の考えが良くわかっているのです。それは食料欲しさ、そして逃げ道の模索でした。そのまま合流せずにまた分かれます。しかしあの3部で病院で一緒だった気骨のある人間に再会します。彼(E)はAの方について来ます。ここのシーンなんか、見ていて、「まだ生きていたんだ、良かった」とこっちが思ってしまうほど、うれしいシーンですよ。

しかし中国人に道を聞いたら革命軍に包囲されてしまいます。なんでみんな銃を持っているのか?という疑問がAに生まれるのですが、戦うしかない。そのときに戦法として中央突破を考えます。いつもこの映画ではそうでした。中央突破はリスクが大きい反面、相手も突破されたら体制が崩れる利点があります。逃げようとしたなら包囲されてしまいます。

「くだらない自由を高い金出して買っているのかもしれない」というEの言葉は信憑性があります。冷静に考えて、ロシアと中国が攻めてきているのでいつかは捕まるのです。逃げおおせる場所ではないのですし戦争が終わっているという確証らしき記号はあちらこちらにおちています。

そして衣食住という甘いえさを目の前にちらつかせて、罠にはまります。Aは逃げようというのですがねえ。

そして女は手りゅう弾をおなかに突っ込まれて死んでます。やるもやられるも紙一重。そしてどちらも本当は戦いたくないのです。最高の舞台を作ってます。それは戦争ではない、しかし殺しあわなければならないという状況です。

そして火であぶり出しされます。「ここで投降か」しかしあぶり出しの場合は殺すということです。参ったね。2人一組。

しかし中国では共産党の戦いが始まっていて、日本人、満州人関係なくやられていきます。とにかく「負けた国の女ほど惨めなものはない」という言葉に表現されております。「十六歳の戦争」にも出てくるテーマです。Aたちの理想の国家を作るはずの連中の暴力ということでかなりの衝撃を受けますが、道中は続き途中に日本人の女たちを拾ってまた一緒に行動します。ここで負った精神的傷もすごく大きいものです。実はこの映画民間から軍隊に入り戦争終結そして愛情の元への帰国への道中を精神修行になぞらえて作られているのです。修行というよりもうできた優秀な純粋な人格の変容と破壊の過程とも言えるものなのです。

敗残兵の部落があるのですが彼らは情報がないのです。負けたことも知らない。そして話題は満州がどうなるか。ソビエトは取らないで中国に帰すだろうとかいろいろな議論がなされます。実際にどうなるのかわからない人のほうが多かったでしょう。しかし同じ日本人同士で女と弟しかいない兄弟でお姉さんがロシア人に犯されるのを見ていて自閉症になった女を送っていくといって犯します。兵隊がです。女は希望がなくなるでしょう。

その兵隊が犯してすぐにAたちに合流したので問い詰めてみてわかった事実です。ここでこの章は、ばさっと終わります。希望はないんですよ。正義をどこまで保てるかです。きつい映画になってきました。しかし良い映画です。見ていてまったく飽きません。

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