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ある程度パルチザンも目的達成したあと、逃げても追われない時に、郷愁から家庭に帰りたくなります。そしてひとり原野を彷徨うのです。動機は「人間の条件」とまったく同じ。シーンも見ているかのごとく同じです。この映画には先があって、家族はいない状態になってしまったことです。梶上等兵も帰っても同じだったと思いますけどね。Bが心づくしの準備をしてくれてます。BとGがAを探しにきたときに会っていて、手紙を言付けていたのです。その手紙にはBのことをある程度知っていること、そして子供のこと、これから行くところなどが託されてました。Aは家庭に戻るべきでしょう。しかしこれほどまでにABと燃え上がらなかった映画だったっけ?まあモスクワでBの叔父ということで姦通していた男が助けてやると来ますが、逆に居場所が判っているということは危険なことでもあるのです。まあどうせ捕まるならと、昔家族で住んでいたところに行ってぎりぎりまで一緒にいようと覚悟を決めます。そこは妻の愛情が感じられるほど、そのままに残してありました。そこで久しぶりに詩情が沸いてきます。そして「ラーラのテーマ」が心地よく流れます。生活も静かな良い時間の流れで、ほんとに久しぶりの人間らしい生活です。

しかしCが死んで追っ手が翌日来ると叔父が知らせに来ました。「この大悪党の保護を受けてくれ」とくるのです。ここで尊厳を取るか、逃げるか、Aとすると不倫ですから、自分の立場というより感情、愛情で動いているのです。しかしGへの愛がないのではないのです。家庭は大事ですが好きな人が出来てしまうことは男も女も仕方ないのでしょう。Aは両方を選択します。すなわちBを叔父と先に行かせて後から行くといい、自分は永遠に近い別れを心の中でするのです。まあ家庭外での愛はこれで終わりでしょう。しかしAには待っている人もいるから、そこに戻らないと。ここで重要なことはBが最終的になぜ、行ったのか?母親の義務、愛情の証を守るということです。その子供がこの映画の冒頭の子供です。

終始ABの愛が変わることはないのですが、子供は両親がいないことをうらんでいます。愛と両親の問題、政治の問題、そして受け継がれるべき血統を見事にまとめております。少し判りにくいかもしれませんがそれは、血の流れ、を表現するためでしょう。愛情の表現だけならもっと簡単なんですがね。

3/30

「三文役者(さんもんやくしゃ)」 新藤兼人監督 2000年

殿山泰司さんの話ですが、まあ映画になるのかな。新藤監督が自分自身を省みるにもいい題材だと思います。先日この監督の娘さんの映画も「LOVE・JUICE」も見たばかりですしいい機会だと思います。しかしはじめに後半の人生を付き合う人との結婚の場面ですが

何かうまくいくというのは、自信があるんでしょう。前半の人と別れるときずいぶん簡単です。戸籍入れてなかったので簡単なんですが女の人も未練はあるんでしょうが簡単に許してくれました。年が16歳違うんですがこれも問題なし。そして両親の許可も「河内音頭」歌ってOK.なんか現代の独身比率がうそみたいな映画です。途中、乙羽さんのインタビューが入るのですがそれも意外と事実だということを示していておかしいですよ。

さらに深い愛情で結ばれているし、女の方もここというところでは芝居打っていて面白い人たちです。恋愛というのはこういうものかもしれません。似ているものは引き合いますね。そしてもと妻も強い。すぐさま籍を入れて養子までもらってしまったんです。それに返すあと妻。ではその養子を子供として私が育てます。女は惚れたらおしまいですね。

しかし魅力的な人でしょう。そうでなければあんなに愛されません。本当に愛されてます。

しかし「裸の島」の前に肝硬変で倒れていたんですね。そのエピソードあたりはこの監督自分の作品ですから詳しいでしょう。あのつらそうな顔は本当につらかったんですね。この映画も地味な映画です。しかし「裸の島」で肝硬変が治ったというのは確かこの映画のときに聴いた記憶がありますが、今こうしてみて見ると運の強い人だと思いました。確かこの頃新藤監督はロケ隊が現地で店と張って自炊で映画作っていたんです。そしてこの映画孤島が舞台ですので酒が飲めなかったのが良かったですね。

続く「母」あたりで映画のせりふですが「男と女の性は人間の根源だ」と言い始めたらしい。みんな観ている映画なので思わず懐かしく見てしまううまさがあります。そして竹中と荻野目の二人が息があっていていいですね。吉田さんは独自にいいです。

「鬼婆」のシーンが出てきますが懐かしいですね。いい映画ですよ。そしてこの映画に戻ると側妻が強い。本妻も強い。これは意地の張り合いと男の優しさでしょうね。

次の「悪党」もいい映画です。最後自害するんですが、なんと言うか哀れさとともに可憐な感じが残る秀作です。といっても最後に見たの何年前か覚えておりません。

まあ殿山さんはお金の使い方がきれいというか、女に好かれる使い方かもしれません。今は男はお金を使わないのが一番いいみたいですが。

68歳くらいからなにか哀愁が出てきて、人生ってなんだろうか?という疑問が浮かんできます。確実に次の世代になっているんですが現役なんですね。その寂しさというか現役だから感じる寂しさがこちらまで伝わってきてつらいですね。癌になって余命半年というときに仕事が立て続けに入ってきます。これは監督の中で周知になったのではないでしょうか?

そしていよいよとなったとき本妻は行かないというのです。強い女ですね。人間もこの意地というものがなくなったら終わりのような感じがします。

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