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冒頭の36歳と17歳の結婚の口説き方が何か思い出されて、臨終というときになにか私も身内のような気持ちにさせられる良い映画でした。途中の新藤監督の全盛期の映画も懐かしかったです。恋愛ドラマとしては上質の話だと思います。

3/31

 

「白痴(はくち)」手塚眞監督 1998年

最近、黒澤監督の同じタイトル見たばかりなのでどうでしょうか?原作が違います。黒澤監督のほうがドストエフスキーですから、日本の坂口安吾とは違いますよね。

あらまあ、また原爆からスタート。廃墟のイメージであとは下町、それも汚い下町の下宿です。道がコンクリートならちょっと前までの東京に会った景色なんですが、数年前にみた大阪の岸和田のほうの景色に似ております。そして町の中の人間模様は、確かにあるだろう、しかし役者の物腰が違う、という感想です。あと極端ですね。

テレビ局の内容は、手塚監督らしいものでやはりこの路線のほうがいいんじゃないか、と思います。「銀河」というアイドルを売っているテレビ局です。彼女のステージに出ていた連中は俳優なんでしょうか。それとクレジットはないですがかなり有名な人(俳優と限らない)が出てきます。私もすべて追いきれませんでした。テレビ局の中のシーンは「鎌田行進曲」のパロディですよね。きっと。

そこで「銀河」にからかわれて、落ち込んでいるときにみる夢のシーンは音がいいですね。この男をA,隣の夫婦の気がおかしいほうの奥さんをB、旦那のほうをCとします。BCが良い味出てます。BCのことが映画を作るAからするとテレビ局の仕事よりもリアリティあるんですよ。もともとテレビ局のシーンは現実性ないんですよ。長屋というか汚い下町に超現実があるという感じの設定なんです。

しかし銀河がAに体調が悪いときにオフにして話しかけるモノローグはかなり哲学しているんです。そして、母性の象徴のような内容を両性具有的な体つきの銀河が話し続けるのです、まさにパラドックス。しかし銀河は結局は欲望の象徴でしょう。この辺でこの映画はいいと思いました。こうなると残りみるときは安心してみることが出来ます。

そして自分の部屋に戻ってみると、BCが近いんですよ。良い味出るんですよ。環境からね。笑い。へこんで帰ってきた自宅の押入れに隣の奥さんがいると普通でもあせりますが、この奥さん普通でないから、尋常じゃない状態になります。この辺おかしくて、笑い転げてます。このBは四国のお遍路さんで途中Cに見初められて連れてこられたと思ったのですが、やはり、何か悩みがあったはずで、この時代の精神状態を表現しているのだと思います。テレビ局は実は参謀本部を揶揄する意味あるのかもしれない。この戦争を顧みるとどうみても、参謀本部がハイになっているとしか思えないんですよ。

Bのこの家での悩みは愛情がないことですけど、Aも常識人で愛情を表現できないし、Bが「嫌われているのですか、私、来なければ良かった」といって迫って初めて意味がわかる人です。ここで判りました。Cがかなり頭の中で飛んでしまっていると、常識的な愛情表現が出来ないのです。Aも映画ということで言葉先にありき、な性分だったのです。ここから同棲が始まるのですが、Aは浅野(「殺し屋一」など)で若いイメージなんですが、Bは甲田(dip In The pool,でキャリア長いので中年のイメージがあるので)役者としてBのほうが遠慮している感じの距離感が二人かわいいです。これ私の感想ですけど。

外に出るとテレビ局と戦争ですが「戦争というものが健忘症にさせてくれる」というせりふがあったと思うけど、これ現代のことも言っているんですよ。現代の戦争は武器を使わないだけに変な戦争ですよね。株価、為替などが影響する資本市場と資金の調達かつ、情報社会というなかで利益を上げていくということはまあ戦争です。

だからこの戦争はいつの戦争でもいいのかもしれない。「世界の果てまで一緒に言って、聖なる山で、精神と肉体の分離を見る」という映像というか、感覚が生まれる時代が舞台です。「世界の果てまでつれてって」とは話が違うんですけどね。懐かしいですね、この本、初版で持っているとなかなか読めないです。京都大学の生田先生の初めてにちかい翻訳本だったと思います。ABの世界の果ては、ひとつになれる瞬間です。まあ、端的に言って深い愛です。はい。しかし大爆撃のときAはBが般若みたいになる顔を見てしまうのです。般若とは悲しみにくれた果ての顔です。何故にBが?時代の代表なのか?その前にCが嵐の中家の屋根に上がって仕舞を舞うのです。Cは嵐がきっかけでこの世に戻ってきて、その霊を呼び起こすきっかけの現在霊がBなのでしょうか。とにかくBCは終わってみれば存在しないも同然の人たちです。狂っているんではなく、存在していないんです。

しかし戦争という愛情の場がAを変えます。「天井桟敷の人々」のシーンさながら「風と共に去りぬ」の炎上のシーンのような爆撃の中、与えられた場(爆撃された場所)のなかで愛を欲し、そして真実の愛を知る瞬間です。思いっきり引き寄せたぜBをAの元に。そして一緒に生きるんだ。死んでからも一緒だよ。実はBはAの母親です。Bの想いとは残した息子に会いに来たのです。そして最後に成仏して、菩薩となりかえっていくのです。

「銀河」役は橋本麗華という女の子。キュートです。そしてメイキングは素晴らしい出来。

映画自体もいい出来なのでそのメイキングが悪いわけないのですが手塚監督はいい監督です。ナレーションでわかります。いい映画だった。

4/1

 

「エレメント・オブ・クライム」ラース・フォン・トリアー監督 1984年 デンマーク

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