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Dの家族はCとの結婚に反対なんですね。まあお金かけて引き取るわけですから、いい訳ないし、それまでまっとうな人生を歩んでいなさそうですからね。しかしそれだけDは家族の中で弱い立場でもあるということです。

そこにCがたずねて来ます。さらにBが追ってきてCに対して払い下げた60万円プラスいくらで手を打つか取り合いをします。ここでCの感情は無視されるし、Cもまたお金でけりがついたあと、何かたくらんでいるような感じなんですね。この女は人生をまだあきらめてませんよ。しかしですAがCの目を見たことがある、そしてCはDの家族が言うほどの悪女ではないという本質を見抜きます。人目で見抜きます。Cも見抜かれたそのAの眼識に興味がわきます。そしてパーティーに招待するのですが、Aはそこで「私と一緒に死刑台に立たされた男の目だと」言うのです。これはうまい表現ですがCがどちらに転んでも幸せな結婚ができない現状の運命とその先行きに希望が持てない状況を一言で表しました。「長い間昼も夜も苦しんできた、何故自分がこんなに苦しまなければいけないのか、とその目がそう叫んでいたのです」とCに言います。そのときのCの目がいいですね。結局Cを魂から揺さぶることがいえたのはAだけですね。お金じゃないんです。まあお金はあったほうがいいですが。このことはCの結婚の判断をAにゆだねる信頼を得ます。いやーーすごいシナリオ。さすがです。「結婚はよくない」Aのアドバイスです。すべておじゃん。そんな中Bがお金を持ってこの会場に来ます。これすごいですよ、貴族社会みたいなプライドと情熱をかけたパーティーのシーンです。白眉といっていいでしょう。「安城家の舞踏会」という映画があるのですがあの舞踏会のシーンみたいにプライドが満ちてます。こちらのほうは偽善も満ちてますけど。しかしAがCを引取とるというのです。「こんな私を」とC.どんな私なのかわからないけど、目で顔でその人の人格を判断したAは本当に見る目を持った人間です。何回も言いますがこのパーティーのシーンはすべての言葉が素晴らしい。ここでのAのCの愛の言葉、優しい言葉の数々、心の交流とはこういうことでしょう。このことが懺悔につながります。Aが死んだと思って財産をとったものがAが実は「財産の持ち主であること」を告白するのです。しかしCはBと一緒になるというのです。なぜならば「Aは純粋すぎる、生きていくのはできない」ということです。そしてCを奪い合ったお金をCは火の中に投げ込みます。まさにAの財産を奪ったことが判明したばかりですのでDはお金がほしいはず、しかしプライドが邪魔をします。ここでプライドを投げ捨てて当座のお金を確保するほうがよいのです。いちど社会の上層に這い上がったものはその地位保全をしてしまうものですね。地位なんかないのですが嘘のプライドだけが残ります。

そして時間は過ぎますが、BとCは結婚をしません。その間、AはBをたずねて、「君とCは結婚をしないほうがよい、それは君にとってもCにとっても破滅だよ」と忠告するのです。AはCを「かわいそうだから好きだ」というのですが、BはCを「好きだけど憎いんだ」というのです。どちらも違うんですよ。恋愛は愛情は好きでたまらなくなるんです。

しかしAを見ているうちにBは前から思っていたことが強く心の中で浮かびます。CはAのことが好きだということ、しかしAと一緒になるとAを堕落させるからBを選んだということ、です。そしてAと話しているうちにやはりBはCをあきらめAに譲ります。しかしAはだからといって行動にでることができるのでしょうか? 最後にAを刺そうとするBがいますがこれは幻でしょうか?

第二部

「恋と憎悪」

Aは権利があるからといって金貸しからお金を借りて生活してました。牧場をAが帰ってくるまで中心に管理していたDの上司Eの妻はしっかり者で借金取りを寄せ付けないのですが、Dの娘Fに気があるのかどうか気にしてます。実際に美人ですが、親たちの狙いは財産でしょう。その親とFがスケートショー(雪祭り)を見物に出かけます。ここでAと出会いますがFのつっけんどんな態度といったらすごい剣幕です。それはなにに起因するのか?それはFの心を読まれていると思っているからです。そしてDと一緒に歩いているとCが突然出てきてDに対してあなたはお金を騙し取ってなにをしようとしたのか忘れてはならないと、仮面をつけたまま言って立ち去ります。かっこいい原節子です。ここでBがでてきてAに言います。「やはりお前を好きなんだ、お前を幸せにしたがっているんだ」ということです。

そして次の日、待ち合わせをしてAとFは会います。そこでまったく態度が違うのです。「時々こっけいなしぐさをするけど、あなたは人間の中で一番大切な知恵を持ってます」とほめるのです。隠していたんですね。恋心を。これに一番早く気がついたのはCでしょう。だから身を引いてます。

実際にこの日にAのCに対する理解は本当に確信をついてますし、CのAの想いはFへの手紙に書いてありました。それは「FがAと結婚するように」というAの幸せを祈る手紙です。Fも馬鹿じゃないので気がつきます。

Fの言葉にもあるのですが場所が北海道というのは吹雪の激しさ、動的動きとAの人生を達観したかのような静的な動きと対に、さらに雪や風の荒々しさがACの精神的な情動の強さにあらわされるといった感じです。またBFも内面は激しいのです。ロシアが違いという位置的な意味も当然あるでしょう。

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