前ページ

しかし警察に密告したシスターは初めて映画館で見たときは唖然としましたよ。それはないだろう、とね。今観てもちょっとねえ。

そして5年の独房。

友との再会と永遠の別れ。この最後にかけてがまた良いのです。何回も言いますがこの二人の役者の最高の演技ですね。こんな演技を引き出す魅力が作品にも、監督にもあるのでしょう。とにかくこれだけ素晴らしい映画なら、一本しか代表作がなくてもいい監督といえると思います。音楽のジェリーゴールドスミス、この人の名前も永遠に忘れないでしょう。映画にのめりこむはじめの頃に観たいわゆる贅沢(ロードショー)の一本です。一人で観にいったんだよなあ。いまだに覚えてます。30年前になったらしいですね。年月のたつのは早い。

10/10

 

「砂の器」野村芳太郎監督 1974年

いまだに人気の高い作品ですね。名作です。しかし原作より映画のほうが情感が高く作られております。また「パピヨン」についでハンセン病の患者が出てきます。

この映画はなんといっても日本の景色がいい。四季折々、いろいろな地方の特色が本当に画面に変化を与えております。

それは状況を描写するだけで、どんな話をしているのかはすべてカットして、状況の様子をテロップで書いて提示するということ、そのことで、画面の情感とその意味の文字としての一致が図られ、かつ画面の景色などの描写から視聴者が個人の人生の歴史に応じていろいろと考える余地というものを作ったことで成功しております。

景色とすると、秋田、石川、出雲、伊勢、大阪、岡山、瀬戸内海などが印象的です。

さらに、ストーリーテラーとしての刑事。この役の丹波哲郎さんがすごく印象的な演技をしてますね。

あとはいろいろと時間的に矛盾はするのですが、それを超える叙情が映画には存在するという点においてすべての矛盾は忘却のかなたへと。

「宿命」生まれてくる、そして生きていくこと、そう人間は一人では生きていけないのです。とてもいい映画です。というよりみんなが知っている良い映画なんでしょう。

10/11

 

「血を吸う宇宙」 佐々木浩久監督 2001年

久しぶりにこの監督の映画観ます。めちゃくちゃなんですよね。

今回は生まれてもいない娘がさらわれたと騒ぐ主婦。あきれる警察。そこに霊能者が現れるという展開。この霊能者で前作を思い出しました。でも一貫して前作とこの作品で感じるのは俳優って大変だなあ、ということです。やりたくて仕方なくてこの役やっているのでしょうか?途中馬鹿らしくならないのでしょうかねえ。まあいいか。

しかし、めちゃくちゃな展開とはいえ、何となく説得力があるのは監督の才能でしょう。ゲストに黒沢監督(CUREの方の監督)が出ていたりします。

そして、宇宙人とインディアンとの戦いをベースに妄想に取り付かれた主婦の話を中心に進んでいきます。

その中でこれはまずいだろう、という表現がいくつかあり、もしかしてこの映画は意外と上映される機会が少ないかもしれない、と思いました。実際のパロディだと思うのですが、あまりに度が過ぎると大丈夫か心配になります。

まあ話は置いておいて、奇想天外な映画ですが、観ていて飽きはしません。ただそれだけしか言うことがないのですが、前作「発狂する唇」よりはまとまりはあると思います。

10/12

 

「恋におちたシェイクスピア」ジョン・マッデン監督 1998年

かなり古い映画になってしまうのですね。この映画はもう最高です。こういうのが一番好きなタイプの映画です。・ちなみに同じ監督の「娼婦ベロニカ」も好きですがこの映画は評判悪いみたい。というより、この映画さえも今年あたり大学生になったばかりの人には受けていないらしいです。信じられない。

とにかく、スランプのシェイクスピアが本当の愛を経験して立ち直る、という話です。そして実際の恋愛進行形で出来上がる作品は「ロミオとジュリエット」。出来すぎのようですが一歩間違うとダサい題材をうまく作りきっております。

そして音楽がまたいい。ロマンティックでダイナミックな音楽です。いわゆる現代版の音楽ですよね。途中、舞踏会のシーンで古楽が出てくるのですが「エリザベス」みたいな迫力はありません。

ですから劇中劇は「ロミオとジュリエット」で映画の進行はシェイクスピアの恋愛。アンハザウェイとの後の話です。映画って、意外と製作監督は作りこんでいるので、背景がわかればより面白いというのがあるのですが、この映画もシェイクスピアやエリザベス時代を知っているとより深く理解できます。あと、原作が有名な映画も原作に負けるという意見を良く聞くのですが、原作の時点で良い物は、それを映画化することでひとつの解釈にしかならないという点を忘れてはいけません。小説からのイメージの世界は読者それぞれが違うものなのです。そのひとつの切り口を監督は提示するだけなのです。ですから自分の感じ方と違うということは当然でしょうし、それは違うというケースが出てくると思います。

そしてこの映画はシェイクスピアの存在自体にロマンティック・ダイナミズムを付与しているという点で勝利している映画だと思います。

あまり内容に触れないのですが、これで十分にわかっていただけると思います。とにかく素晴らしい恋愛ドラマですよ。そして「ロミオとジュリエット」の素晴らしさを再認識することでしょう。作り手は作成途中ですごく楽しい思いをしたことでしょう。その雰囲気がそのまま映画に出た作品です。

そういえば、「ゴースト」も役者たちが楽しんでいたという監督のコメントがありましたが、役者も人間、相性はあるでしょうね。

10/13

 

次ページ