「鬼一法眼(きいちほうがん)」6 勝新太郎ほか監督 1973年
第十一話 黒田義之監督
この映画はとりあえず、このシリーズの中締め的な作品です。舞台は横浜。異人もたくさんいます。その中で尊皇攘夷の運動に巻き込まれて、異人の仲間に捕まり拷問を受けます。ここまで弱い主人公を見るのも初めて。しかし卍が助けてくれます。それは権力を使って助けるのです。彼は実は盗人の格好をしておりますが、外国関係の担当の幕府の役人でした。そして長崎奉行の子供だったのです。養子先が神奈川奉行の役人になりそのまま役人として裏の世界を自分の目で確かめるべく盗人稼業を行っていたのです。ということは主人公と実の兄弟ということが卍にはわかりました。俳優としても実の兄弟ですしね。主人公は外国に渡りたいというのですが、卍は立場上鎖国政策をしているので何も言うことは出来ません。卍としてある仲介者を紹介するのです。
作品としてどうのこうのというより、やっとシリーズにメリハリと展望が開けた作品でした。良かったです。
第十二話 斉藤武市監督
舞台は泉州の堺。
ここで公金横領事件が起き、犯人が主人公の幼馴染でした。その幼馴染も賞金がかかっているので切り、過去を捨て「修羅の道を行く」とつぶやく主人公。前回あたりから流れがまた良くなってきました。とにかく卍が出てくるというのはいいですねえ。
最後に紹介された、商人のところに行くとスペインまでの渡航料は1000両といわれます。それに応じて1000両を差し出す主人公。値引きなんてしません。次回から楽しみになりました。
9/5
「鬼一法眼(きいちほうがん)」7 勝新太郎ほか監督 1973年
第十三話 山下耕作監督
切り札が登場します。あの異人に犯された元許嫁が主人公を探して和尚と旅をしているのです。前にも旅の途中で会っているのですが、そのとき女のほうはわかったみたいなんですが、主人公は知らない振りをしたのか、そのままになっていたのです。
そしてこの回で初めて、事件の後の二人の話が登場するのです。さらに、和尚と身を寄せているうちの娘が異人に無理やり結婚させられると聞いて自分が身代わりになっていくのです。ここで主人公との別れを決心したのですよ。
しかし因果な流れで二人は再会します。それを振り切りまた旅を始める主人公。
なにかここまでの総括的な物語でした。
当然この監督ですので、ダンディズムたっぷり。
第十四話 三隅研次監督
いい監督が続きますね。
そして舞台は横浜。また卍が出てきますね。さらに昔助けた娘が再登場してきます。だんだん話が収斂してきますね。
この娘が旅芸人一座にいるのですがそこの道化が今度の悪人です。しかし道化で身をごまかして、口が利けない振りをして善人ぶりをしてうまくごまかしてきたのですが、主人公の目はごまかされなかった。さらに善人というのがあだで、一座の身代わりに犠牲になってくれといわれるのです。うまく逃げてきた犯人からするととんでもないことで、これでは意味がありません。
しかし実はこの一座自体が麻薬の密売の隠れ蓑になっていたのです。そして役人がバックについていた。そうなると取り締まるものがいないのですが、場所は横浜。奉行に卍がいます。卍はすべて解決、犯人もたいした罪はないので娘と一緒に賞金稼ぎを忘れて巡業できるよう自由の身にしてあげます。なんと後味の良い終わり方。
続けていい感じのドラマが続きました。この回は後半への布石にもなるような内容でした。
9/6
「アメリカングラフィティ」ジョージ・ルーカス監督 1973年
なんというか、中年以上の方には、自分の学生生活そのままという感じの人が多いのではないでしょうか?かく言う私もこんな高校生活を送ってました。それでこの映画はロードショーで観たのですが当時はまだヒットしたという感じでもなかったです。私もサントラはすぐに買いましたが映画を観て感動するという感じではなかったのです。
今観ると、逆に、自分の高校生活とダブらせてみることが出来るせいか、やけに懐かしく、いとおしいものに思えます。すべての登場人物が周りにいた人間にそっくりですし、たった一日でこれだけのことが起きるなんて、楽しいですよね
先輩がいて後輩の面倒をみたり、ナンパしたり、喧嘩、悪戯、映画のエピソードすべてがつぼにはまっていて面白い。
あとは映画のBGMで流れるロックンロールが絶妙のテイストで画面に躍動感がありますね。多分、携帯、インターネット、ビデオなどが手元に当然にある時代の若い子には理解できない部分があると思います。これらのものがまったくなくて、たとえば待ち合わせで相手が遅刻したとき、何時間待てるかは相手をどれだけ信用できるかということにかかっていた時代を知っている世代には懐かしさがあると思います。あと、優等生ではわからない部分はあるかな。なんというか、ねたみ、恨みのない純粋な青春の送れた時代のアメリカの一ページです。特典映像でも監督自身が言っておりますが、アメリカの良かった時代へのオマージュだということらしい。しかし恋愛に積極的というのはいいなあ。相手に感情をぶつけている点も最高に良いです。今になってこの映画の価値がわかりかけてきました。高校時代が楽しくて仕方ないという思い出のある方にお勧めです。昔観たという人も改めて見るとその良さがわかると思います。歌の歌詞も素直なんだ、これが。当たり前すぎますが、主役は「ビューティフルマインド」の監督でアカデミー賞も取りましたし、もうひとりは有名俳優になりました。この映画で端役の俳優はハリソンフォードですね。
9/7