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しかし、若さあふれる映画です。そして京マチ子さんが老けてしまったという悲しい現実にこのころから直面します。しかしはっきり言ってこの映画はオールスターキャスト。さらに美術良し、原作良し、音楽良しと悪いところがありません。本当に素晴らしい日本を代表する映画の一本でしょう。

まあ顔の形の疑問。これって根源的な問題です。皮膚と配列という表層的なものでしょうが、持っている問題は根源的。

美意識とはなにか?を問われます。その前に常識とはなにか?

「覆面の心理」人間は匿名では違う人格が出てくるのか?答えは戦争でもわかります。それに呼応するごとく精神病院が出てきます。なかに戦争の被害者がたくさんいるのです。そして美しい顔に傷のある女の子も。

このほかにも素晴らしいシーンの連続で、いちいち切り取ることはしませんが、仮面の人格とそれまでの人格と怪我をしたあとの人格の3つが並存していたのです。というより怪我をしたから仮面の人格を楽しめるようになったのでしょう。

精神薄弱の女がその本質を見抜いたのは、顔などの外見にかかわらず、人を識別しているからです。

ということは一般の人は何を持って人を識別しているのか?という問いかけが残ります。

とにかく実存の問題、さらには人間の内面の問いかけを提示しております。私はそのスタッフの豪華さに唖然としてみました。いい人材が使われてます。それも才能でしょう。あとは多くは語りたくないとても良い映画です。

9/26

 

「極道記者(ごくどうきしゃ)」望月六郎監督 1993年

題名がいい加減ですね。記者とか弁護士、医者の悪いやつは手に負えない感じ。

しかし頭いいというか、世渡りがうまい。こちらの世界に精通していない私とすると見ていてこの監督、脚本家よく知っているな、と思うのです。

博打打ちなのでドライな部分もあるのですが、その中でウェットな部分がこの映画をなぜか忘れがたいものにしております。

こんな映画で、飽きずに観られるのか?そう思ってみはじめましたが、なんのその、一気に観てしまうパワーがありました。音楽もいいし、出てくるキャラクターがなんとなくいいです。この監督は「皆月」の監督ですがあの映画でも最後にかけて弟がやさしい笑顔を見せる、そんな瞬間を語りたい、そういうやさしさを持った監督のような気がします。

どちらの映画も設定は決してほめられたものではありませんし、ちょっと過激な面もあるのですが、兄弟や姉妹、友情などの微妙なバランスをうまく描いているような気がしてならないのです。しかし最後には人間は孤独ということを強調しながら、助け合っているよね、という部分も小出しにしてそこに妙に魅力を感じる作り方をすると思いますよ。

多分ともに低予算ですが、丁寧な映画の作り方をする監督だと思いました。決してテレビドラマには見えない映画独特の雰囲気にこだわるというか、映画を作れる監督です。ともにちょっと古めの作品になりましたが、今も活躍しているのでしょうか。もし近作を観る機会があったら観てみたい監督です。この映画も人には薦めにくい映画ですが、なにか観ていて感じるものはありました。「酒と女と博打」こんな世界でも生き抜くたくましさと不器用さを感じたのかもしれません。

9/27

「鬼一法眼(きいちほうがん)」10 勝新太郎ほか監督 1973年

第十九話 若山富三郎監督 

主人公自身の監督ですね。内容はちょっと要領の悪い男が出てくるのですが最後まで正直に生きた様子がなにか主人公も私も感動的でした。

しかしさすがに役者だけのことはあり、監督としての力量は若干編集などに冴えがないという感じはします。

結局、賞金稼ぎを死んでいく侍の手柄にして自分は取り分なしで終わるのです。ですから話としては本筋からは関係ない亜流の話です。しかし、その真摯な態度を見せる貧乏侍には心を打たれました。

 

第二十話 大洲斎監督

なにか終盤へのつなぎの意味合いが少しずつ出てきました。医学を志しスペインに渡ろうとした男の後を追ってきた女と遭遇します。この人はスペイン語も勉強していて、主人公に大いに興味を抱かせます。そして哀れな境遇から先にスペインに密航をさせてあげようとするのです。

しかし事態は深刻な方向に。追っていこうとした恋人は密航の前に殺されていたのです。そして何も目標がなくなった女はまた自分の家に帰ることとなる。

この辺からスペインとスペイン語もちらつかせてかなり主人公が本当にスペインに行くのだろうか?と思わせる展開になります。

前回の木村功さん、今回の加藤武さんといい、 良い演技も続いてますし、内容もいいです。主人公が人生のむなしさばかり見るという展開でしょうか。

9/28

 

「鬼一法眼(きいちほうがん)」10 勝新太郎ほか監督 1973年

第二十一話 黒田義之監督

今回の主人公は賞金稼ぎというより、弱者の願いを達成させることでお礼をもらうという形。ちょっと仕置人的な感じです。

しかし請求する金額は半端じゃないので、すごい割りきりが必要でしょう。またこれだけ請求できるからにはどんな状況でも達成する(助ける)自信がなければ出来ません。

そして今回は本当に好きあったもの同士が一緒になれないで、ほかの人と結婚したとき、その旦那はどんな仕打ちをするのか、また好きという感情はどうしようもないものなのか、を主人公に問いかけます。もちろん、そんなことで微動だにしない素振りはしますが、また主人公の心のひだが深くなったことでしょう。

 

第二十二話 小林正雄監督

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